ジュエリーブランドGYPPHYが人工鉱石モアサナイトにこだわる理由とは?

近頃よく耳にするエシカルジュエリー。
 
人道的に配慮された素材や調達方法で作られたジュエリーのことなのですが、日本でエシカルジュエリーを展開しているのが、今回話をお伺いしたGYPPHYの滝川譲さん。
 
子ども好きの滝川さんには、どうしても人工鉱物モアサナイトでないといけない理由がありました。
 
エシカルジュエリーブランドGYPPHYの魅力と、モアサナイトにこだわる理由は、何なのでしょうか。
 

GYPPHY滝川譲さんのイラスト

GYPPHY代表/滝川譲

アメリカ生まれの沖縄育ち。
外資系企業に就職しながらグロービス経営大学院にてMBAを取得する途中にモアサナイトと出会う。
好きな言葉は”Don’t chase the cash, chase the dream.”と『我以外皆我師』。

エシカルジュエリーGYPPHYとは?

ーーまず、GYPPHYとはどんなブランドか、教えていただけますか?
 
滝川さん
GYPPHYは一言でいうと、エシカルジュエリーブランドです。
 
素材や発送で使用する梱包材、パンフレットなどにおいて、エシカル(倫理的)であることにこだわりを持って、ジュエリーの企画販売を行っています。
 
ーーエシカルジュエリーブランドという訳ですね。そもそも滝川さんがエシカルなジュエリーブランドを始めようと思われた理由は何だったんでしょうか?
 

子どもが世界のどこかで働いている現状を変えるために

楽しく遊ぶ子どもたち
滝川さん
エシカルジュエリーブランドGYPPHYを始めた理由は、私が無類の子ども好きだということからきていきます。
 
変な意味じゃなくて(笑)、昔から本当に子どもが好きでして。
 
なので、将来は子どもに関わる仕事がしたいなと漠然と考えていて、学生時代は保育園で職業体験をしていたりもしました。
 
その頃から、世界には児童労働という問題があるのは知っていたんです。
 
ーー小さい子どもが働いているということですか?
 
滝川さん
はい。カカオやコーヒー農園、コットン畑で働いていたりします。
 
労働環境が劣悪ですし、そんな中で1日中働いても、わずか数十円しかもらえないという現実があります。
 
そんな現実を知っていながら、当時は中学生ということもあり、何かできる訳ではありませんでした。可哀想だと同情することしかできません。
 
ただ、やがて大人になると、状況が変わります。
 
周りが結婚し出しますし、親友にも子どもができたりもします。親友の子どもがまあかわいいんです。
 
ーーその頃には、既に働かれてたんですよね?
 
滝川さん
はい。半導体の会社で働いていました。ここで運命的な出会いがありまして。
 
中国のお客さんで、半導体からモアサナイトを作れる企業さんに出会ったんです。
 
最初は、モアサナイトが何かよくわかってなかったのですが、調べていくうちに、ジュエリーに使われている素材で、しかもダイヤモンドと変わらない程の輝きを放つものだと知りました。
 
そこで、昔の想いが蘇ってきました。
 
世界には、大好きな子どもが鉱山で児童労働をしていて、そこで採れた鉱石を使ってジュエリーは作られている。そして、目の前には、人口鉱石のモアサナイトがある。
 
いろんなことが重なって、「ジュエリーブランドをやろう!」と思いました。
 
自分がこのモアサナイトを使ってジュエリーを作れば、児童労働は少しでも減らせると思ったんです。
 
ーー児童労働という問題と、モアサナイトの魅力が合わさって、GYPPHYが生まれたんですね。では実際に、エシカルジュエリーを作る上でのGYPPHYのこだわりを教えていただけますか?
 

エシカルである前に、GYPPHYはジュエリーブランドである

滝川さん
GYPPHYでは、どこにもないデザインを大事にしています。

ジュエリーというものはエシカルである前に、良いモノでないといけないと思っていますので、ジュエリーのデザインとクオリティーにはこだわっています。

GYPPHYのエシカルジュエリー

それと、少し話は逸れるのですが、私はザッポスのトニーシェイが好きでして。
 
ーー靴の通販で有名なザッポスですよね。
 
滝川さん
そうです。ザッポスはお客様をハッピーにすることに、徹底的に向き合っているんです。
 
だからGYPPHYでも「Don’t chase the cash, chase the happiness」(売上を追わずに幸せを追求しよう!)という理念を掲げていて、お客様に寄り添うことを大事にしています。
 
誕生日にはサプライズで花束を贈ったこともあるんですよ。
 
ーー花束ですか?!消費者からすると、非常に嬉しいと思うのですが、なぜそこまでされるんでしょうか?
 
滝川さん
それも、お客様に寄り添えるブランドでありたいからです。

品質とデザインのGYPPHY

 
お客様から「こういった理由でジュエリーが欲しいのです」とお話をいただくことがあり、それでわかったんですが、ジュエリーを購入するお客様には、それぞれの想いと言いますか、ストーリーが存在します。
 
要は、その方たちにとっては、ジュエリーがモノ以上の価値を持っていまして。
 
例えば、実際に当社のお客さんの中には、大切なパートナーを亡くされて、その1周年の思い出として。流産されて、その子がこの世に存在した証として。そんな想いでジュエリーを求められる方もいらっしゃいます。
 
正直、ジュエリーはなくても生活に支障は出ませんし、必需品でもありません。しかし、ジュエリーはそんな大切な想いに、寄り添える存在なんです。
 
だからこそ、特別な背景があると知った場合には、サプライズというカタチでお祝いさせていただいています。

 

誰かを喜ばせるジュエリーだから、誰も悲しまない原料の調達を

ーー先ほどのエピソードも、GYPPHYさんの徹底した顧客志向も本当に素敵だと思いました。
 
ではジュエリーに関して、もう少し具体的なお話を伺いたいと思います。ホームページを拝見して思ったのですが、GYPPHYさんでは、少し変わった鉱石を使ってらっしゃいますよね。
 
滝川さん
モアサナイトとフェアマインドゴールドを使っています。
 
ーーあまり聴き馴染みがないのですが、どういった鉱石か教えていただけますか?
 
滝川さん
では、まずはフェアマインドゴールドからお話しします。
 
フェアマインドゴールドは、簡単に言えば、フェアトレードされたゴールドです。

フェアトレードの金

先ほども申し上げたように、金銀などの宝石を扱う鉱山の労働環境は、本当に劣悪であることが多いんです。
 
児童労働の問題はありますし、採掘段階で出る大量の水銀に被曝して、健康被害も出ます。妊婦の方は水銀に被曝すると、流産の可能性が高くなります。
 
また、転落事故も多くて、その後遺症で障害が残ったり、最悪の場合は命を落とすことも。
 
このように、鉱山には様々な問題があるのですが、そういったものを一切排除しようとするのがフェアマインドゴールドです。
 
採掘の段階において、安全な労働環境で児童労働もなく、ジェンダーの平等性、さらには倫理的な賃金も支払われているのが特徴です。
 
ーー倫理的に調達されたゴールドという訳ですね。では、モアサナイトはいかがでしょう?
 
滝川さん
モアサナイトは、元々隕石から見つかった物質で、すごくきれいに輝くんです。
 

モアサナイト(Moissanite)

その輝きから、最初はダイヤモンドだと思われていたほど。
 
1990年代から人工的に作れるようになったのですが、当初は技術がまだ進んでいなかったので、高価なものでした。ただ昨今では、安定して多く造られるようになったことから、手に届きやすい価格となり、今ではジュエリーにも利用されているんです。
 
ーー人工鉱石ということですね。ただ、鉱石と言いますと、イメージですが、天然鉱石の方がキレイな印象があります(汗)
 
滝川さん
そう思われる方もいらっしゃいますが、実は、モアサナイトは本物のダイヤモンドと比較しても、その輝きに遜色はありません。
 
それだけ綺麗にもかかわらず、価格がダイヤモンドよりも安いということで、アメリカでは5年くらい前からすごく流行しています。
 
ーーそうだったのですね!モアサナイトの方が安いと言っても、値段はどれくらいでしょう?
 
滝川さん
一概には言えないのが正直なところです。
 
相場では、1ctで、カラー、クラリティ、カットが全て最高級の場合のダイヤモンドが70から100万前後で取引されています。モアサナイトはその10から20分の1の価格といったところです。
 
ーーダイヤモンドと同等レベルの輝きを放ち、かつ安価な素材がモアサナイトということですね。
 
滝川さん
簡単に言えばそういうことになります。ただ、モアサナイトの場合それだけではなく、環境にも優しいのも特長です。
 
というのも、天然のダイヤモンドの場合、鉱山では採掘に大量の電気エネルギーと水を使用します。もちろん、環境負荷などをしっかりと管理しているダイヤモンド鉱山もありますが、まだそれは多くはありません。
 
人工鉱物のモアサナイトを使っているということは、そのような環境負荷はないので、環境に優しいという側面もあるんです。
 
ーー環境にも優しかったんですね(汗)GYPPHYさんはすごく徹底して、エシカルな調達をされているのがわかりましたが、他にも取り組んでいることはございますか?
 
滝川さん
実は、包装にもこだわりがありまして。
 
紙だけを使うプラスチックフリーの包装にしているのと、梱包材を最小にして、過剰包装を控えています。

GYPPHYのパッケージ

元々は、高級感が大事だと考えていたので、贅沢な梱包材を使っていたのですが、ある日倉庫に足を運んだ際に、倉庫が梱包材でいっぱいに詰まっていたのを目にしました。
 
その時に、もっとコンパクトにできないかと考えたんです。
 
だって、箱は大事にとっておく人もいますけど、基本的には捨てる方の方が多いじゃないですか。
 
箱を大事にするか、ゴミを減らして環境を大事にするかを天秤に掛けた時に、環境を大事にしたい気持ちが勝りましたし、そのように思う消費者に支持していただきたいと考えて、梱包を小さくしました。
 
また、使用するテープも、植物由来原材料を使用した環境に優しい素材を使用しています。

 

裏側にある背景を知るだけでいい

ーーエシカルであることを徹底されているブランドであることを理解しました。エシカルジュエリーブランドを経営されている滝川さんだから、消費者に伝えたいことはございますでしょうか?
 
滝川さん
まずは、児童労働など、裏側にある問題を知って欲しいと思います。それだけでいいんです。
 
要は、何事も知ることから始めないといけないと思ってまして。
 
グレタさんのような環境活動家が欧米で支持されているのは、みんな問題に対して知っているという基盤があるからだと思います。
 
一方で、日本ではまだまだ環境や、フェアトレードのような話は知られていません。
 
知ることを飛ばして、行動はできないですし、まずは問題を知ってもらえれば嬉しいです。
 
だから、GYPPHYでも、ブランドを通じて問題に気づいてもらえるように、エシカルな原料を使っている理由をメッセージとして同梱しています。
 
ーーまずは問題を知って欲しいというのは、私たちも日頃から読者に伝えていることですので、親近感を覚えました。GYPPHYさんでは確か、寄付も行っていたかと思います。
 
滝川さん
はい。ユニセフを通して、アフリカ・ブルキナファソの鉱山で働く子どもたちに寄付をしております。
 
私たちがエシカルなジュエリーを販売しているのはいいんですが、児童労働や搾取労働とはいえそれでしか生計が立てられずに、その職業に依存している人たちもいるのが現実です
 
実は、エシカルジュエリーを販売するだけでは解決できないこの問題に対して、すごく葛藤していました。だから、そういった方達にも何か支援できないかと考えて、金の鉱山が特に多いブルキナファソで、子どもたちが学校に通えるプログラムを支援させていただいています。
 

将来はもっと直接的なエシカルを。

GYPPHY(ジプフィー)滝川さん

ーーそれでは、最後になりましたが、今後の展望を教えていただけますか?
 
滝川さん
ビジネス面とそれ以外の面でそれぞれあります。
 
まず、GYPPHYとしては、売上も大切なのですが、何よりもファンを増やしたいと考えています。
 
支持され続けるブランドでありたいんです。
 
なので、現状オンライン販売しかしておりませんが、百貨店や常設店、また自社店舗を構えて、GYPPHYにしかできない体験を提供したいと考えています。
 
また、大きくなれば、より多くのデザイナーさんと一緒に、面白いデザインのジュエリーを作っていきたいです。
 
ーーそれ以外のところではいかがでしょう?
 
滝川さん
ビジネス以外のところでは、もっと直接的にエシカルなことをしたいと考えております。
 
今考えているのは、例えば教育の分野です。学校や職業訓練校などをつくりたいと考えています。
 
今はフェアマインドゴールドなどを購入し支援したり、寄付したりなど、間接的にしか繋がれていないませんが、もっと直接的にGYPPHYが繋がることを行いたいです。
 
また、個人的な話になりますが、私が育った沖縄で奨学金を作ることも考えています。
 
沖縄は全国的に見ても平均所得が低いこともあり、どうしても本土の人と比較するとアドンバンテージがでてきてしまいます。そのアドバンテージで、やりたいことがあってもできないという人もいるのが現実です。
 
なので個人的に資産を得たら、返済しなくてもよい奨学金制度をつくることも将来の目標の1つです。

 
編集後記
インタビュー中に、紛争ダイヤモンドを題材にした映画ブラッドダイヤモンドに衝撃を受けたことを話してくれた滝川さん。
 
エシカルジュエリーに取り組みながらも、「現地の子ども達に何かしてあげられてる訳ではない」と児童労働や紛争鉱物に対する強い思いが見えました。
 
もっと直接的にエシカルなことがしたいと語っていましたので、今後の動きに注目が集まります。
 
それでは最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
 

               
ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの事業責任者。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることが現在のミッション。
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