お客様は地球温暖化を止める同志。ハチドリ電力が電気料金高騰の割引負担を選択した理由と固定プランに込めた想いとは?

2020年の年末から年始にかけて、例を見ない電力高騰が起こりました。
 
その流れで、多くの新興電力会社が扱う再生可能エネルギーは信用できないという声も一部あったかと思います。
 
ただ、電力が高騰したのは、決して会社の問題ではなく、電力供給の構造的な問題。
 
その問題に対して、真摯に取り組む会社の1つがハチドリ電力です。
 
ハチドリ電力は、電力高騰を受けて、高騰額を全て自社負担としたことでも、注目を集めました。その額は決して安いものではありません。
 
しかし、それでも電力高騰分を自社負担にした理由はなんだったのでしょうか?
そして、このタイミングで固定プランを始めたのはなぜなのでしょうか?

インタビューイー
小野悠希
ハチドリ電力代表
1995年兵庫県生まれ。2018年にボーダレスジャパンに新卒入社。地球温暖化のために絶滅する動植物をなくしたいという思いからハチドリ電力の事業を立ち上げる。

 

大手よりも必ず安くなるプランを

 
──新プランの概要を教えてください
 
今回は、ハチドリ電力の料金プランを従来の市場連動型から、固定型に変更しました。
 
従来の市場連動型は、電気料金が電力市場の卸売価格に合わせて変動するもの。
 
市場価格自体は、2019~2020年にかけて下がっていたため、市場連動価格にすることで、最安値を目指していたのですが、年末から年始にかけて市場価格の異常高騰が起こりました。
2020年冬の電力高騰
これに対して、ハチドリ電力が行ったのは高騰分を自分たちで負担する形での割引対応です。
 
割引対応によって、お客様の負担は一時的に見ればなくなりましたが、価格高騰が再び起こらない保証はどこにもないですし、価格高騰にお客様が不安になるのは違うと思いました。
 
なので、『電気の使用量×単価』からなる、変動しない固定プランをスタートすることにしました。
 
固定プランの場合は、大手電力会社の従来プランと比較して必ず安くなるようになっています。
 

──必ず安くなる料金はどのようにして実現したのでしょうか?
 
電気料金は大きく分けると、下記の2要素に分かれます。
 

  • 基本料金
  • 電力量料金

基本料金は大手電力会社の従来プランと同額で、差がつくのは電力量料金。
 
こちらをハチドリ電力では少しずつ安くなるように設定しているので、必ず安くなる仕組みになっています。
 
もう少し詳細をお話ししますと、電気料金の中には、
 

  • 再エネ賦課金
  • 燃料費調整額

が入っております。
 
──聴き慣れない言葉ですね。
 
そうですよね。名前がややこしいですが、燃料費調整額は火力発電のための燃料(原油、液化天然ガス、石炭)の価格変動に応じて毎月の電気料金を調整し、価格変動を電気代に反映させるための費用です。
 
近年はこの燃料費調整額がかなり下がっていて、電気料金からマイナスされている状態になっています。
 
ハチドリ電力は自然エネルギーだけを販売しているので燃料費調整額はかからないのですが、この項目を除くと大手電力会社より高くなってしまうため、同額を加えることで、「必ず安くなる」を実現しています。
 

──その中に、寄付の分と発電所設立の分も入っているという訳ですか?
 
そうです。以前は2%プラスでいただいていたものを、今回は電気料金の中より2%分を寄付としていただく形となります。
 

電力高騰の裏にある構造的な問題

 
──もう少し、今回の電力高騰に関してお伺いしたいのですが、これはなぜ起きたのでしょうか?
 
端的にいうと、需要と供給のバランスが崩れたためです。
 
冬の寒い時期に電力の需要が上がった一方で、供給が減り、市場価格が高騰しました。
 
要因は、LNGと呼ばれる液化天然ガスによる火力発電が稼働停止したこと。
 
なんで稼働停止したのかの要因に関しては、様々あるのですが、
 

  • コロナ渦でパナマ運河の輸送船が渋滞してしまったこと
  • 天然ガス生産国で、生産工場が止まったこと
  • 寒波で需要が例年以上に増えたこと

などが挙げられます。
 

──火力発電のお話じゃないですか。再生可能エネルギーとどう関連するんですか?
 
火力発電の出力停止に自然エネルギーだけを販売するハチドリ電力は一見無関係に見えますが、実は日本の自然エネルギーはほとんどがFIT制度という固定価格買取制度を利用したFIT電気と呼ばれるもの。
 
ハチドリ電力もこのFIT電気をみなさんに販売しています。
 
FIT電気は、火力発電や原子力発電の電気も含む電力卸売市場で決定された取引価格にて取引されるため、FIT電気の仕入れ値も同様に高騰しました。
 

地球温暖化に対するアクションを止めないためにも、リスクは自社で

 
──料金がマーケットに依存しているということは、マーケットから調達している限りは、固定プランになっても、変動のリスクはあるということじゃないですか?
 
おっしゃる通りです。
 
表向きには固定プランでも、電力をマーケット調達している限りは、変動リスクはあるのですが、その変動リスクは会社がかぶるか、もしくはお客さんがかぶるかの二択になります。
 
ハチドリ電力の場合は、お客さんがリスクをかぶるのはおかしいと考えて、自社がリスクをかぶる選択をしました。
 
また、今回の高騰を受けて、ハチドリ電力は電力の調達をマーケットに依存しないために、発電所建設のスピードを早めています。
 

──今回の高騰分に関しては、ハチドリ電力が負担する形だったかと思いますが、その決断に、社内で反対はなかったですか?
 
よく言われるのですが、全く悩まずに即決でした。
 
というのも、ハチドリ電力に切り替えて下さった方は、地球環境に対してアクションを起こす同志だと思うんです。
 
しかも、まだ始まってまもないサービスのハチドリ電力を信じて切り替えてくれています。
 
その仲間に対して、「市場連動だから料金が10倍になってしまいました。」と負担を強いるのは絶対に違うなと。
 
じゃあ、どうするのかと言ったら、割引対応する選択肢しかありませんでした。
 

3.5%が変われば、社会が変わる

自然エネルギーの総量を増やすこと
 
──同志という話が出ましたが、地球温暖化は予断を許さない状況かと思います。同志を増やすには何が必要だと考えますか?
 
まずは再生可能エネルギーを利用する人数を増やす必要があります。
 
地球温暖化に関心はあっても、気候変動と電力が結びついていない人が多い状況だと思いますので、まずは一つのアクションとして電気がありますよということを啓蒙することが重要だと思います。
 
また、今回の市場価格高騰を受けて、自社で発電所を増やすことは中長期的に考えていたのですが、もっと短いスパンでやっていく必要があるなと思っています。
 

──今後の展望を教えてください。
 
地球温暖化に対するマイルストーンとして、日本は2030年には2010年比でCO2排出量が半分に。2050年には0に、を目標に掲げています。
 
どちらかが達成できなければ、地球温暖化が後戻りできない状況になると言われている以上、再生可能エネルギーを使用する世帯数を増やしていくことが重要だと考えています。
 
全体の3.5%の人が参加した社会運動は成功すると言われているため、まずは2030年までに、3.5%の人に電気を切り替えてもらえればと思います。
 
3.5%というと、少ないように感じるかもしれませんが、世帯数にすると198万世帯。
 
決して小さな目標ではありませんが、地球温暖化の進行を止めるためにも、ハチドリ電力として、まずは3.5%を変えていければと思います。
 
編集後記
今回は、ハチドリ電力が固定プランを新設した背景と想いをお伝えしましたが、いかがでしたか?
 
個人的には、「電気を切り替えてくれたお客様は地球温暖化を止める同志」と表現し、どこまでも顧客を大切にする姿勢が印象的でした。
 
また、お話にもあったように、電気を変えることは、地球温暖化に対して私たちができるアクションの1つ。何か行動したいと思われた方は、まず電力から変えてみるのはいかがでしょうか?
 
それでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 

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ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの初代編集長。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることがミッション。

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