傘を使い捨てる時代は終わる。傘のシェアリング『アイカサ』を展開する丸川照司さんが今の時代に伝えたいこととは?

出先で急に雨が降ってきた時に便利なのが、コンビニなどで売っているビニール傘。

そんな便利なビニール傘ですが、年間8000万本も売れ、その半数以上が捨てられています。作るのに石油が使われること、そしてすぐにゴミになってしまうことを考えれば、ビニール傘は環境負荷が大きいものです。

そんな大量に買っては捨てられる傘の状況に待ったをかけたのが、1日70円で使える傘のシェアリングサービス『アイカサ』を展開する丸川照司さん。

ありそうでなかった傘のシェアリングサービスを始めたきっかけと、サービスの魅力に迫りました。

丸川 照司
日台ハーフで、4割ほどシンガポールなど東南アジアで育ち中国語と英語を話せる。
マレーシアの大学へ留学中に中国のシェア経済に魅了され、私自身が最も欲していた傘のシェアリングサービスを大学を中退して始める。現アイカサ代表、夢は財団を作ること。

 

傘のシェアリングサービス、アイカサ(iKasa)

ーーそれでは、アイカサが(iKasa)どんなサービスか教えていただけますでしょうか?

丸川さん
アイカサは、一言で言いますと、傘のシェアリングサービスです。

雨の日を快適にするために、濡れない体験を提供しています。

急に雨が降って困るシチュエーションはいろいろあるかと思うのですが、特に、電車通勤される方に、駅で使っていただくことが多いです。

雨と傘の課題を同時に解決するのがシェアリングサービスを始めたきっかけ

ーー傘のシェアリングサービスと言いますと、ありそうでなかったと言うのが率直な感想なのですが、どうしてアイカサを始めようと思われたのでしょうか?

丸川さん
シェアリングを通して、雨の課題と傘の課題を解決できる、そしてその価値が高そうだと思ったからです。

2017年当時はアジアで様々なシェアリングサービスが乱立してた時代でした。

その頃私はマレーシアにいたのですが、日本でもメルカリやDMMがレンタルバイクを始めるとのニュースを見て、これは時代の流れが変わるなと思ったんです。

シェアリングエコノミーに対する丸川さんの投稿↑流れが変わることを確信した当時の投稿

で、自転車も良かったのですが、私は個人的には傘のシェアリングサービスが欲しいなと思っていました。誰か始めないかなと思って待っていたのですが、待ちきれずに自分で始めてしまいました(笑)

ーー自分が欲しいシェアリングサービスが傘で、それをご自身で始められたんですね。

丸川さん
そうですね。傘なら自分でもできそうって思ったんです。

ーーでもなぜ傘だったのでしょう?

丸川さん
傘がなくて濡れた経験って、誰にでもあると思います。

私自身も急に雨が降ってきて傘を持っていなかったりという経験が何度もあって、だから濡れない体験を提供したいし、きっとみんなもそんなサービスが欲しいのではないかと思っていました。

ビニール傘消費量世界一の日本

ビニール傘の消費量が世界一の日本

ーー日本がビニール傘消費量世界一だと聞きました。

丸川さん
そうですね。ビニール傘自体が悪いとかではなく、その量と使われ方が問題だと思っています。

傘は日本全体で、1億本以上存在すると言われていて、その6割以上がビニール傘だと言われていて、数にして推定8000万本。おっしゃる通り日本はビニール傘の消費量が世界一だと言われています。

ビニール傘は、みなさん購入された経験あると思うんですけど、突発的な需要で購入することが多いんです。

傘を持ってないけど、雨が降っているから、既に家には何本もビニール傘があるのに、仕方なく購入するものだとも言えます。

要は、みなさんが欲しいのはビニール傘ではなくて、濡れない体験なんです。

実際に、警視庁の落とし物の上位に傘があって、しかも取りに来る人はほとんどいないとのことでした。

ーー確かに、ビニール傘は消耗品と言いますか、傘がないときにやむを得ず買っています(汗)

丸川さん
なので、まさにここにチャンスがあるなと思いました。

どういうことかと言いますと、8000万本の多くは、リサイクルされずゴミになるとのことで、これは環境にもよくないです。

それに、みんなが欲しいのは傘じゃなくて濡れない体験だと考えると、傘のシェアリングしかないと思いました。

 

4ステップでシンプルなユーザー体験

ーーアイカサの具体的な使い方を教えてください。

丸川さん
アイカサはアプリをダウンロードして、決済方法などの会員情報を入れてもらうと、あとは次の4ステップでご利用いただけます。

アイカサ利用の4ステップ

借りる際も返す際にもQRコードの読み取りを行うだけなので、シンプルで使いやすいと思います。

あと、傘を持ち歩く必要がなくなるので、手ぶらで生活が送れるのも個人的に好きなポイントです。
ーーシンプルで便利ですね。ちなみに傘が故障することもあると思いますが、その際はどうなりますか?

その際には、チャットで一報をいただいて、スポットに戻していただければ、私たちが回収して修理をして、再び市場に出します。

故障の際もユーザーが料金を負担することはありませんので、安心して利用いただけます。
ーーそれは嬉しい仕組みですね。でも、傘を修理ができるイメージがないのですが、傘自体も特殊なんでしょうか?

丸川さん
アイカサで使用しているのは、株式会社サエラ(Ca et la)さんが開発した仕組みを採用させていただいており、おっしゃる通り傘自体が特殊なものになっています。

普通の傘だとどこかが壊れたら捨てられると思うのですが、サエラさんが開発した傘は、骨一本から修理可能
サエラさんが開発した傘の仕組み

なので、シェアリングというサービスの観点から見ても、長く使えるという観点から見ても、非常に合理的な傘を利用しています。

また、実は傘の製造から廃棄までも環境負荷もバカにできなくて。

環境省によると、ビニール傘一本あたり692gの二酸化炭素を排出しているとのことですが、これが年間8000万本も購入されていると考えると、数万トンという非常に大きな数字になります。

そういう意味でも、すぐに壊れるビニール傘を買うのではなく、長くみんなで使えるシェアリングサービスの意義は高いと思います。

傘はシェアリングが当たり前の時代に

傘を使い捨てる時代が終わることを見据えるアイカサ丸川さん

ーーでは、最後に将来の展望をお聞かせ願えますか?

傘はシェアリングするのが当たり前という価値観の世の中を作りたいと考えています。

そもそもサービスを始めた当初は、シェアリングという概念自体が一般的では無く、駅などに営業しても中々導入してもらえませんでした。

しかし、今は多くの方に使っていただけるサービスになってきたので、多少なりとも傘を買うという行為に対する問いかけになっているのかなとは思っています。

なので、利用者数を100万人、1000万人と伸ばすことで、傘は買うのでは無く、シェアが当たり前の価値観を作っていきたいです。

その頃には、

なんで前は傘を使い捨てていたのだろう
アイカサを使う以外の選択肢があった時代があるんだ

とみなが思ってくれるだろうと考えています。

自動販売機を使ったことがない人がいないのと同じように、アイカサを使ったことがない人がいない。アイカサがそんなレベルで普及してたら嬉しいです。

アイカサの詳細を見る
編集後記
同い年でトリリンガルなど、様々な共通点から意気投合し、実現した今回のインタビュー。

シェアリングサービスで、傘を使い捨てるのではなく、シェアするのが当たり前の世の中を描いている丸川 照司さんのビジョンは、環境問題やサーキュラーエコノミーに関心がある多くの方に響いたのではないでしょうか。

私自身が傘を持ち歩かない人間なので、急に雨が降ったらビニール傘を買うのではなく、コンビニでアイカサが借りられる未来がすごく楽しみです。

今回は、貴重なお話ありがとうございました。

               
ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの初代編集長。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることがミッション。

【免責事項】

※本記事に掲載の情報は、公的機関の情報に基づき可能な限り正確な情報を掲載しておりますが、情報の更新等により最新情報と異なる場合があります。

※本記事はエシカルな情報提供を目的としており、本記事内で紹介されている商品・サービス等の契約締結における代理や媒介、斡旋をするものではありません。また、商品・サービス等の成果を保証するものでもございません
クリップボードにコピーしました。