「幸せなときめきを届ける」ために、キリンビバレッジが認証取得支援を行う理由とは

今年で35周年を迎える国民的ブランド「キリン 午後の紅茶」。
 
この35周年を迎えるタイミングで、「午後の紅茶 ストレートティー 250ml紙パック」がレインフォレスト・アライアンス認証マーク付きのパッケージにリニューアルしたことは以前の記事でお伝えしました。
 
このような取り組みは今に始まったことではなく、実は以前より、キリンビバレッジ株式会社では、スリランカの紅茶農園に対して、レインフォレスト・アライアンス認証取得の支援を継続して行っております。
 
同社が継続して、社会貢献に繋がる活動を行うのには、大事にしている、ある考え方が根底にあるから。
 
今回は、同ブランドのシニアブランドマネージャーの加藤氏に、取り組みに至った経緯から、大事にしている考え方、そして将来の展望を伺いました。
 

インタビューイー
加藤麻里子
キリン 午後の紅茶 シニアブランドマネージャー
アメリカの大学を卒業後、現ネスレに入社。その後、モンデリーズ・ジャパン株式会社マーケティング部でクロレッツやリカルデントのブランドマネージャーとして従事した後、2018年4月にキリンへ入社。キリンビバレッジマーケティング部で午後の紅茶のブランドマネージャーとして従事。2020年4月よりシニアブランドマネージャーとして、引き続き、午後の紅茶を担当し、現在に至る。

 

100年続くブランドであるために

 
──今回、レインフォレスト・アライアンス認証を取得した農園の茶葉に切り替えた理由を教えていただけますか?
 
少し長くなりますが、経緯からお話しできればと思います。
 
当社のCSV戦略部が2010年のCOP10が開かれた際に、生物資源の調達リスクを調べたことがありまして。
 
結果として、リスクと呼べるようなリスクは、当時は見つかりませんでした。
 
ただ、「午後の紅茶」というブランドにおいて、今後100年と続くロングセラーブランドでありたいことを考えれば、リスクが生じてから、何かあってからでは手遅れになってしまいます。
 
特に、午後の紅茶にとっては、茶葉の存在が必要不可欠。
 
茶葉が調達できなくなってしまうと、商品が作れなくなってしまい、販売することもできません。
 
なので、調達リスクは見つかりませんでしたが、その時から、将来を見据えて、先手を打つことに決めました。
 

認証農園から調達するだけでは限界があった

 
──その取り組みがレインフォレスト・アライアンスの認証取得支援だった訳ですね。
 
仰る通りです。
 
調達リスクを減らすにはどうすればいいのかと考えた際に、私たちの目的は、経済的に持続可能で、かつ環境や人権にも配慮している農園を増やすことだとわかりました。
 
その目的を果たすには、レインフォレスト・アライアンス認証が最適だと考え、認証取得支援を始めたのです。
 
──認証取得支援だと、取り組みとしてのハードルが高いように感じるのですが。
 
正直社内でも、認証取得の支援ではなく、「認証農園から調達する」という選択肢もあがりました。
 
しかし、認証農園からの調達だと、長期的に見た際に構造的な限界があるんです。
 
スリランカには、数少ない大農園と、その他の小農園が何十万とあります。認証取得には、トレーニングと、監査費用が必要なので、ある程度の知識と金銭的な余裕がない場合は、認証取得ができない訳です。
 
それは、スリランカの農園全体で見れば、認証取得が難しい何十万もの小農園を置き去りにすることに繋がります。
 
であれば、我々が、先導してやるべきだと考えました。
 

持続可能なブランドであるためにも、ブランドとしての覚悟を決めるという意味でも、既に認証された茶葉を買い付けるのではなく、紅茶農園の認証取得支援を決めたのです。
 

社会に影響力がある立場だからこそ

 
キリンビバレッジが行う農園支援
 
──認証取得をすることでどのような変化があったかを教えてください。
 
いくつか変化があるのですが、1つ目は農家の方の生活や健康レベルが上がったことです。
 
認証を受けていない多くの農園は、上の代が行ってきた従来のやり方を疑わずに行うのが通常で、とにかく農薬をいっぱい撒けばいいと考えていたり、知識がないが故、農薬を散布した服のまま、家の中で生活を送ったり。
 
これって私たちからすると危険なことですよね。でも彼らにとっては、知らないが故に普通のことなんです。
 
一方、認証を取得してからは、農業に関する知識が身につくので、無駄に農薬を使わなくなります。農薬を買うにはお金がかかるので、農薬使用を減らした分は収益向上に繋がり、収益が上がった分は給料も増えます。
 
また、農薬の使用量が減ったことで、疾病率も下がったと聞いています。
 

──それは生活水準が上がって、生活環境も良くなった訳ですね。
 
大きな変化ですよね。
 
また、社会全体の文脈で見ても、「午後の紅茶」が紅茶農園支援をしていることを発信していくことで、一企業として、これまでの経営の仕方に一石を投じることができると思うんです。
 
今はSDGsという文脈で語られると思いますが、自然や社会を大事にして、一緒に価値を生んでいける経営が増えていくのではないかと考えています。
 

パーパス・ブランディングから生まれる、一貫したアクション

 
──これまでの話から、御社は理念から行動までが一貫しているように感じます。
 
パーパス・ブランディングを大切にしているからだと思います。
 
パーパス・ブランディングとは、社会とお客様の生活をよりよいものにすることで、
ブランドの成長と利益創出を志向するマーケティングです。
 
ブランド戦略をパーパス(ブランドの社会的存在意義)に基づいて行う考え方で、商品も、広告も、販促も、全ては午後の紅茶のブランド・パーパスである「いつでもお客様に幸せなときめきを届ける」に沿っている必要があると考えています。
 
「何をやっているか」よりも「なぜやっているか」を大事にしているんです。
 
私たちのパーパスである「いつでもお客様に幸せなときめきを届ける」を実現するために、そして持続させるためには、「午後の紅茶」の美味しさの源泉である、スリランカ産の茶葉がないと成り立ちません。
 
事実として、日本に輸入される茶葉の約50%はスリランカ産で、その約4分の1は午後の紅茶が使用しています。
 
午後の紅茶というブランドの持続可能性を考えた時に、茶葉の供給を持続可能にする必要があるのは言うまでもありません。
 
だから、認証取得支援に取り組んでいます。
 
また、実は認証取得支援は2013年から始めていますが、その前の2007年より、キリンビバレッジでは、スリランカの子ども達に対して「キリンライブラリー」という図書寄贈による教育支援を行っているんです。
 
──本を届けているのですか?
 
「キリンライブラリー」も、もとはパーパスに沿って行われている活動の1つです。
 
キリンライブラリー
 
図書寄贈によって、「スリランカの教育水準の向上に繋がれば」と考えて行っている取り組みなのですが、その背景には、都市部と農村部の教育格差の問題がありまして。
 
都心は比較的収入が高く、いい家に住んで、いい教育を受けています。
 
反対に、田舎にいくほど貧しくなり、特に地方の学校は、日本では当たり前のように置かれている学級文庫や充実した図書室が無いのが現状です。
 
田舎では茶畑を代々引き継ぐのが一種の慣習ですが、読み書きができなければ、必要な知識を学ぶこともままなりません。
 
そのため、持続可能な茶葉の供給を目指す上で、長期的に必要なのは教育水準の底上げだと考え、図書寄贈を始めたんです。
 

お客様との接点になる商品だから伝えられること

 
──大事にされているCSV経営を体現されていますね。
 
ありがとうございます!このようなストーリーを伝えたくて、アニメーションを使ったCMを制作したのですが、ありがたいことに、予想以上の反響を頂いていまして。
 

海外の制作会社に依頼して制作したものなのですが、すごくこだわりが詰まっている動画です。
 

 
制作工程を少しだけお伝えすると、実際にスリランカの紅茶農園や紅茶農園の皆さんの様子を写真で共有し、それを参考にしてアニメーションを制作しました。
 
1人の少女を主人公に、小さい頃に、こういう環境で育って、という感情移入できるストーリーに仕立てているのですが、現地の言葉であるシンハラ語を使い、小屋の看板までリアルに再現したりと、リアリティーに拘りました。
 
その甲斐もあり、「心温まるCMですね」と手紙をいただいております。
 
午後の紅茶は、酒類などとは違い、幅広い年齢の方に楽しんでいただける商品で、老若男女問わず、多くのお客様との接点になるブランドです。
 
その午後の紅茶でキリングループが大切にする健康・環境・地域社会のCSVを体現できるのは非常に嬉しく思います。
 

午後の紅茶がこれからも飲まれるために

 
午後ティーが100年続くブランドであるために
 
──最後になりますが、将来の展望をお聞かせいただけますでしょうか。
 
当社は、自然の原料なくして商品を作れない会社です。
 
紅茶農園で言えば、生産体制の改善を継続して取り組んで行かないと、紅茶が作れなくなってしまいます。
 
美味しい茶葉に支えられているからこそ存在する午後の紅茶であって、午後の紅茶がこれからも沢山の人から愛されるブランドであり続けるために、パートナーシップを増やしていき、より良い生産体制を現地の農家の方と整えていきます。
 
今はスリランカが中心ですが、今後はベトナムなど他の国でも農園の認証取得支援を拡大していきます。
 
また、日本だけではなく、世界全体でSDGsがもっと当たり前になり、一人一人が自分にできることを実行していける社会になると良いと思います。
 
それは一社だけの取り組みに留まらず、国民も世界の人も一緒になって作れればいいですね。

               
ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの事業責任者。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることが現在のミッション。
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