海を誰でも楽しめる場所に。須磨ユニバーサルビーチプロジェクトが目指すものとは 

夏はビーチに行く、海水浴を楽しむ方が多いでしょう。
 
しかし、障害を持っている、特に車椅子の方にとって、海は最も遠い存在だとも言われています。
 
普段は、海に行くことが選択肢にない障害者の方にも、海を楽しんでもらおうと始まったのが、今回紹介する須磨ユニバーサルビーチプロジェクト。
 
プロジェクトを開始したきっかけと、変えたい現実に迫りました。
 

インタビューイー
土原翔吾
あふれ出た教育者
元理科教師。
不登校生徒の担任、魅力的な車椅子の方(代表の木戸)との出逢いをきっかけに教師を辞め、須磨ユニバーサルビーチプロジェクト立ち上げに携わる。素敵な人・商品はあるのに世の中に知られていないことを実感し、現在は、フリーランスで企業の広報・PRも請け負っている

 

みんなのできないを、できたに変える

 
──須磨ユニバーサルビーチプロジェクトとは何か、教えていただけますか?
 
須磨ユニバーサルビーチプロジェクトは「みんなのできないをできたに変える」をビジョンにしているプロジェクトです。
 
普段、海やアウトドアなどを諦めてしまわざるを得ない障害者をはじめ、ご高齢の方、ベビーカーユーザーのご家族、みんなで楽しめる環境を提供しています。
 

障害者も健常者もなく、一緒に楽しむ

 

──プロジェクトが始まった経緯を教えていただけますか?
 
日本と海外における障害に対する認識の違いに気付いて、それを面白い方法で解決しようとしたことが始まりでした。
 
元々健常者だった代表の木戸は、事故で下半身麻痺になり、後天的に歩けなくなってしまいまったんです。
 
そして、リハビリをしていく中で、日本と海外のリハビリに対する考え方の違いを知ります。
 
日本は、どちらかというと歩けないまま、なんとかすることにフォーカスをしていて、一方海外は、少しでも可能性があるのであれば、歩けるためのリハビリをするとのこと。
 
それもあり、オーストラリアに渡ってリハビリに励みます。
 
そこで見たのがビーチマットとヒッポキャンプ。
 
それらのアイテムのおかげで、障害者も健常者もなく、そこには一緒にマリンスポーツを楽しんでいる姿があったんです。
 
──確かに、日本でそのような光景を目にしたことはないですね汗 それを日本に導入したということですか?
 
そうです!
 
実は、ゴールドコーストと神戸がライフセービングの姉妹都市でして。
 
たまたまなのですが、神戸ライフセービングクラブに日本で唯一の車椅子のライフセーバーの方が所属しているんです。
 
そんな縁もあり、最初はクラウドファンディングで導入することを試みました。
 

本当に障害者は「守る」べきですか?

 
須磨ユニバーサルビーチ3
──土原さんは前職が教員だということですが、それも障害者教育に携わることに関係しているのでしょうか?
 
おっしゃる通りで、日本の障害者教育の仕方に違和感を感じていたのは事実です。
 
学校では、障害者を守りなさいという教育をするじゃないですか。
 
でも、本当にそうですか?って問いたいんです。
 
守るんじゃなくて、一緒にやっていく、インクルーシブな環境を用意することの方が大事じゃないかと思っています。
 
だから、ユニバーサルビーチプロジェクトのように、ただ一緒に楽しめるイベントをやっています。
 
バックグラウンドは関係なく、少し障害者が多い、車椅子の人が多いだけの普通に楽しいイベントにしたいなと思っています。
 

──確かに、思い返してみると、学校でも社会でも、障害者の方をどこか別の存在として扱っている印象はありました、、、汗
 
そうなんですよ。
 
障害に対するそもそもの認識が変わればいいなと思いますね。
 
もちろん身体的、物理的に配慮する必要はあると思うんですけど、別に遠慮する必要はないと思うんです。
 
昔はメガネをかけている人も障害者だと扱われていましたが、今ではお洒落アイテムの1つですよね。
 
そうやって、社会の認識が変わっていけばいいなと思います。
 

遠かった海を選択肢の1つにしてくれるアイテム

 
──イベントで使用するアイテムを具体的に教えていただけますか?
 
ビーチマットとヒッポキャンプに関してですが、ビーチマットから説明します。
 
ビーチマットは、車椅子が砂浜を通れるようにするためのアイテムです。
 
ビーチマット
 
通常、車椅子だと砂浜には行けないのですが、車椅子のままで砂浜まで近づくことを可能にしています。
 
もう1つのヒッポキャンプは、水陸両用の車椅子です。
 
ヒッポキャンプ
 
ボディはアルミでできていて、海でも浮くことが最大の特長。なので、ヒッポキャンプを使うことで、車椅子のまま、海に入ることが可能になります。
 

──素晴らしいアイテムですね!
 
ありがとうございます!
 
障害者の方にとっては、やはり海というのはハードルが高い場所でして。
 
そもそも遊びに行く選択肢に上がらないと言います。
 
日本では、バリアフリーは整ってきましたが、海となると、まだまだ未整備ですよね。
 
なので、海に行くこと自体ハードルがすごく高いですし、そこから先のアウトドアとなるとさらに難しくなるのが実情です。
 
ただ、ビーチマットとヒッポキャンプがあれば、ビーチ沿いから海を見るだけじゃなくて、実際に海に近づくことも、入ることもできます。
 
これは、海が選択肢にも入ってなかったことから考えると、すごく大きな変化だと思います。
 

脳裏に浮かぶ笑顔

 
須磨ユニバーサルビーチプロジェクト 
──すごくやりがいを感じるプロジェクトですね。
 
本当におっしゃる通りです。
 
海が遠い場所だと諦めていた方の笑顔を見るだけで、本当にやってよかったなと思えます。
 
パッと思い返すだけでも表情や風景が脳裏に浮かぶ方がいるんですよ。
 
本当に最高の笑顔を見せてくれます。
 
あるご家庭では、子どもさんが障害を持たれていて、初めて海に入ったシーンがありまして。娘さんの最高の笑顔に、お父さんが思わず一緒に海に入っていったシーンが忘れられません。
 
私服がびしょ濡れになっていましたね(笑)
 
もう1つは、父親が後天的に障害者になったご家庭で、それまで海からは遠ざかっていたのですが、イベントに参加することで、久しぶりに子どもが海に来れてすごく喜んでいました。
 
その時は、お父さんが自分でひっくり返れないので、子どもは嬉しすぎてお父さんを揺すったりして楽しんでいたのが印象的です。その息子さんの嬉しそうな笑顔もそうですし、お父さんが息子さんの笑顔を見て、すごく嬉しそうにされていたのは今でも脳裏に浮かびます。
 

──すごく微笑ましい光景ですね。障害者の方にとっては、隔たりを感じてしまう海を、プロジェクトの名の通り、ユニバーサルにされているんですね。
 
ありがとうございます。
 
また、みんなが交わることで、当初から想定していなかった副次的な効果もありまして。
 
いろんな人が関わることで、素敵なコミュニティができたと思っています。
 
ビーチマットは重たいので、運ぶのに人手がかかるのですが、逆にみんなの協力が必要になるので、自然と人が集まってくれるきっかけになっていて、障害があってもなくても楽しめる空間になっていくんです。
 
これってすごく重要なことだと思っていまして。
 
要は、自分とは違う他者を受け入れるということじゃないですか。
 
ユニバーサルビーチプロジェクトの場合は、障害者の方ですが、他者を受け入れるという文脈で言いますと、ジェンダーなどいろんな話がありますよね。
 
違いを排除するんじゃなくて、受け入れる。
 
そんな居心地のいいサードプレイスを築けているのが嬉しいです。
 

障害者も健常者も関係なく、幸せなコミュニティを

 
土原翔吾さん
──それでは最後に、将来の展望を教えていただけますか?
 
将来的には、全都道府県にユニバーサルビーチを導入できればと考えています。
 
ただ、それはビーチマットとヒッポキャンプを購入してもらうという意味合いではなく、今ある素敵なコミュニティごとを持っていくというイメージです。
 
ただ、ハード面を入れ替えるだけではなく、接し方や、マインドセットという部分のソフト面からもアプローチできればと思っています。
 
今の実績としては、18都道府県、20ビーチですが、全国のビーチで障害者も健常者も関係なく、幸せなコミュニティを広げていきたいです!
 
全都道府県と言いますと、海がないところもありますが、そこではみんながアウトドアを楽しめる環境が当たり前になればいいなと思います。
 
また、水陸両用の車椅子を国内生産でつくってしまいたいとも思っています。現在、海外製しかなく、気軽に購入できる値段ではありません。
 
登山にいくときは、登山用の靴をはきますよね?同じように、車椅子の方がアウトドアにいくときは、アウトドア用の水陸両用車椅子に乗る、みたいになってほしいと思っています。
 
編集後記
今回は、車椅子の方にも海を楽しんでもらうことを目指す須磨ユニバーサルビーチプロジェクトを紹介しましたがいかがでしたか。
 
取材を通じて感じたのは、日常の見えないところで無意識に作ってしまっている健常者と障害者の壁の存在。
 
「どうやったらできるのか」にフォーカスし、”できない”を”できた”に変えることが壁を壊すきっかけになればと切に願います。
 
それでは、最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。

               
ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの事業責任者。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることが現在のミッション。
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