生物多様性条約|生き物を保護する条約の目的や背景をわかりやすく解説

気候変動

生物多様性を守る国際的な条約、生物多様性条約。世界規模では初めて、生態系を守るための約束が取り決められました。
 
現在、1日に100種もの生き物が、地球から姿を消していると言われていて、多種多様な生物が存在する姿が、失われつつあります。
 
生物の個体数や種類が減少している背景には、人間による自然界での活動が影響しているという事実があります。そんな状況を改善すべく決められたのが、生物多様性条約です。
 
当記事では、生物多様性条約を1度読んだらすんなりと理解できるよう、簡単にご説明します。記事の後半では、ひとりひとりができるアクションまでご紹介しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
 

生物多様性条約とは?

生物多様性条約とは、特定の動物や地域だけに着目するのではなく、地球全体の生態系をまるごと保護する目的の条約です。
 
対象の地域が、地球上の全ての地域であり、全ての種を対象とする条約は、世界で唯一のものです。

条約名称 「生物の多様性に関する条約」
英訳 Convention on Biological Diversity(CBD)

どのような目的で決められたのかを、採択の流れとともに、ご説明します。
 

目的

下記の3つの大きな目的によって成り立つ、生物多様性条約。

  • 生物の多様性の保全
  • 生物の多様性の持続可能な利用
  • 遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分

特徴としては、先進国が資金を出し、途上国が生物多様性を守るための取り組みを行えるように支援するというものです。
 

発行の流れと締約国数

生物多様性条約は、1993年12月29日に発効された条約です。1992年6月、ブラジルにおいて開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択されました。
 
現在、194の国と地域が批准している条約です。日本に関しては、1993年5月28日に締約国になりました。
 
生物多様性条約が採択された背景には、生物多様性を守らなければいけない状況があったからです。それでは、どのような背景があったのでしょうか?
 

生物多様性条約が取り決められた背景

生物多様性条約によって守られる自然
生物多様性条約は、生物多様性が失われているという現状を改善するために、取り決められた条約です。主な理由として挙げられるものは、下記の2つです。
 

危機的状況にある生態系を守るため

現在、自然界において、通常ではあり得ないスピードで絶滅危惧種、絶滅種が増加しています。
 
なんと、1年間で約1万種の生き物が地球から姿を消している現代。生き物が絶滅するスピードを、日単位で換算すると、1日に100種もの生き物が絶滅している計算になります。
 
このまま対策を講じず、絶滅種や絶滅危惧種を増やすことは、人間の生活の基盤である生態系を崩すことと同義です。自然にある生態系から恩恵を受ける豊かな人間の生活を、持続できなくなってしまうことでもあるため、生態系を保全することが急がれています。
 

自然界での人間の活動による影響

自然から生物多様性が失われつつあるのは、自然界の営みだけが関わっているのではなく、人間による活動が増したことにより、助長されています。
 
例えば、産業、畜産、土地利用など、様々な経済活動のために、人間によって切り拓かれている広大な森林。そのため、人間の活動による生物多様性破壊を防ぐために、生物多様性条約のような取り決めが必要とされました。
 

生物多様性条約が抱えるABS問題

一見、生物多様性を保全できる素晴らしい条約のように見えますが、ABS問題という課題を抱えている生物多様性条約。ABS問題とは、途上国の生物多様性を壊し、先進国が利益を上げているという状況を指摘した議論です。
 
※ABSはAccess to genetic resources and Benefit Sharing(遺伝資源の利用から生じた利益の公正で衡平な配分)の略称。
 
例えば、生物多様性からなる遺伝資源を活かし、医薬品や食料品、化粧品などを製造することで、利益を上げることができます。
 
以前は、遺伝資源を持ち出すことに関する規則は、全くと言っていいほどありませんでした。そのため、資源が存在する国や地域へ、利益を還元するシステムも整っていなかったことが事実。
 
しかし、途上国が自国にある遺伝資源を利用し、先進国が利益をあげている状況に対し、適正に利益を配分することを求めています。逆に、先進国の企業はルールの制定に反対し、議論が続けられている状態です。
 

生物多様性条約に関連する条約

生物多様性は地球上の全ての生き物、地域を対象としていますが、比較的限定して生き物を守るための条約も存在しています。
 
広く知られているのが、ワシントン条約とラムサール条約です。
 

ワシントン条約

絶滅のおそれがある野生動植物の取引を禁止する、ワシントン条約。例えば、サイの角や象牙がワシントン条約の規制対象です
 

正式名称 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約
目的 絶滅のおそれのある野生動植物の保護をはかること、過度な動物利用を防ぐこと

ラムサール条約

水鳥が生息する、水湿地を守るために取り決められたのが、ラムサール条約です。
 

正式名称 特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約
目的 保全・再生、ワイズユース(賢明な利用)、交流・学習

生物多様性条約を受けた各国別の活動

現在、各国で生物多様性条約を受けた動きが見られています。世界でも、積極的にリアクションを見せているのがフランスです。また、日本においても生物多様性条約を反映した行いがあるため、2つの国の事例をご紹介します。
 

生物多様性条約を受け積極的に動くフランス

フランスは化石エネルギーから脱却するため、自国領内の石油とガスの生産に終止符を打つ法案を可決した世界で唯一の国です。
 
ヨーロッパ全体として、フランスのみが行っていることが、3つあります。

  • パリ協定からの離脱を望む国との貿易協定の締結に反対を唱えた
  • 除草剤成分「グリホサート」から3年で脱却することをめざす
  • 森林を破壊して生産された産物の輸入を防止する戦略を備えた

さらに、フランスは石炭火力発電所の閉鎖を法律に盛り込んだG7で最初の国です。
 

生物多様性条約を意識した日本の動き

日本は、人と自然が共生する「いきものにぎわいの国づくり」を目標に掲げ、取り組みを行ってきました。
 
その他にも、過去100年間に破壊してきた国土の生態系を100年かけて回復する「100年計画」を提示。そして、今後5年間に取り組む具体的な施策として4つの「基本戦略」を唱えています。

  • 生物多様性を社会に浸透させる
  • 地域における人と自然の関係を再構築する
  • 森・里・川・海のつながりを確保する
  • 地球規模の視点を持って行動する

国単位で、活動を行うこともできますが、個人が始めやすい貢献もあります。最後に、生物多様性を守るために個人でもできることをご紹介します。
 

私たちにできる、気軽な貢献

生物多様性条約が守る自然のハチ
「生物多様性を守る」という言葉は、たいそれたことに聞こえるかもしれませんが、ひとりひとりが日常で意識を向けるだけで、貢献することができます。
 
逆に、国や自治体が生物多様性を保護するために努力をしても、個々人が自然をないがしろにすることは、今の現状を改善することかできません。
 
ということで、私たちが、気軽に日々の生活で実践できる4つのアクションを、こちらでご紹介します。

  • 毎日の食生活で地産地消をする
  • 3Rにチャレンジする
  • 外来種を持ち込まない、放たない
  • 地球温暖化を防ぐ

例えば、森林に行って動物を保護することだけが貢献ではありません。地元の市場を訪れ、地産地消をすることも、立派な貢献なのです。
 
また、生物が個体数を減少させてしまう理由として、外来種による侵略や、地球温暖化による気候変動などがあるため、自然を傷つけないライフスタイルが求められています。
 
少しずつ、自然を配慮した生活を送ってみてはいかがでしょうか?
 

最後に。自然を守ることには、ひとりひとりが貢献できる

生物多様性条約は、国単位や国際的な機関だけに向けた条約ではありません。条約が取り決められたことを受け、個人がどんな貢献をできるかを考えることが求められています。
 
生物多様性があるからこそ、豊かさを保つことができる人間の生活。持続可能なかたちで、自然を守っていくためには、今が改善を目指せる分岐点です。
 
生物多様性を守るために、私たちができることは、昨日よりも少しだけ、環境を守るようなライフスタイルを心がけること。当記事が、周りの自然環境について考えるきっかけとなれば幸いです。
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Ayaka Sato
Ethical Choiceのインターン。自分のアクションで、地球のどこかの誰かが幸せになってくれる、そんな未来を描いて日々奮闘中。
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