パリ協定|気候変動対策のため、脱炭素社会を目指す協定について解説

上昇し続ける世界の平均気温。2020年は、アメリカのカリフォルニア州で54.4℃という最高気温が観測されるなど、異常気象が目立ちました。
気温上昇や豪雨など、自然災害と思われがちですが、気候変動は自然界で勝手に起こっている事象ではありません。私たちの暮らし、消費活動、モノの製造など、人間の活動が深く関わっているのです。
便利な現代社会において、環境も気にかけながら過ごしていくことが求められています。なぜなら、このまま地球温暖化が進行すると、生き物が住めない状態になってしまう可能性があるからです。
そんな状況を解決すべく、締結されたパリ協定は、京都議定書につづいて2020年以降の地球温暖化対策を取り決めた約束です。
脱炭素社会を、世界全体で目指すこの条約には、どんな期待があるのでしょうか?今回の記事は、複雑そうなイメージがあるパリ協定を簡単にご説明します。
温暖化対策の新たな取り組み、パリ協定とは?
パリ協定とは、京都議定書の後を継ぐかたちで取り決められた、新たな取り組みです。国別に温室効果ガスの削減目標を定めています。
パリ協定は、先進国だけでなく途上国を含めた、世界全体で温暖化を食い止める対策。21世紀後半には、温室効果ガス排出を実質ゼロにすることが、大きな目標として定められています。
発効年 | 2020年 |
合意 | 2015年パリ「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」にて |
特徴 | 途上国を含む、 55カ国以上が参加すること |
上記で挙げた要素に加え、パリ協定は世界の総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准するという条件があります。
結果、パリ協定の締結国だけで、世界の温室効果ガス排出量の約86%、159か国・地域をカバーする状態です。
では、パリ協定において、温室効果ガス排出量の削減を目標とした理由はどのようなものでしょうか?
脱炭素社会にならなければいけないわけ
パリ協定では、脱炭素社会を創ることを最終的な目標としています。経済成長とともに、当たり前のように排出していた炭素を、なぜ見直す必要があるのでしょうか?
まず、大きく分けて、脱炭素社会を実現せず、環境問題へ配慮した社会へシフトとしないと地球や私たちの暮らしへ大規模な影響があると言われています。
影響は、主に下記の6つです。
- 地球温暖化
- 海面上昇
- 森林火災
- 砂漠化
- 異常気象の増加
- 森林破壊
炭素排出量をゼロにしない限り、気温は上昇し続けることから、地球温暖化が進みます。そして、地球温暖化の進行に派生して、上記のような様々な自然災害が引き起こされてしまうのです。
現に、アマゾン熱帯林では森林火災が多発しています。また、東南アジアを中心に深刻化する森林破壊。
前代未聞と呼ばれるほどの、環境問題が多発していく時代を避けるひとつの方法が、脱炭素社会を実現し、地球温暖化の進行を防ぐということです。
パリ協定における目標
先ほど、脱炭素社会の重要性をお伝えした通り、パリ協定において重要なキーワードは「脱炭素化」。二酸化炭素の排出量を抑え、脱炭素社会を実現するために定められた、パリ協定の目標をひとつずつ確認していきます。
パリ協定の具体的な目標は、世界の平均気温上昇を、産業革命以前に比べ、1.5℃に抑えるという努力をすること。
その先で、できる限り早く、上昇し続ける世界の温室効果ガス排出量を下降傾向にすることで、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとることが目標とされています。
温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとるということは、ガスの排出量をそもそも抑え、吸収の役割を果たす森林の働きを促すということです。
上記でご説明した目標を達成するために、パリ協定においては、いくつかのルールが設けられています。
パリ協定におけるルール
パリ協定には、大きく分類して3つのルールが存在します。
- 削減目標を5年ごとに深掘りすること
- 削減実施状況の国際的な「見える化」
- 途上国への資金・技術支援
まず、削減目標の振り返りに関しては、各国は目標に対する進捗を5年ごとに提出することが義務付けられています。また、温室効果ガス排出量の削減状況が、国際社会において把握しあえるように、進められている見える化。
さらに、先進国の義務として、途上国もガスの排出量を削減しながら、発展まで目指すことができるように、途上国への資金・技術支援が求められています。
パリ協定が期待される理由
パリ協定が効力を持ち始める、2020年以前に使用されていた京都議定書は残念ながら成功とは言えませんでした。なぜなら、先進国だけに目標を与えることで強制感があったため、不公平だという議論があったからです。
そんな京都議定書の改善点を活かした、ポスト京都議定書としてパリ協定が注目される理由としては、主に2つの要素があります。
途上国も巻き込んだ国際条約
京都議定書の削減目標が先進国にだけに向けたものであったのに比べ、パリ協定は途上国も含めて温室効果ガスの減少を目指すことができる取り決めです。
京都議定書が発効された時点では、温室効果ガス排出量がそれほど多くなかった中国やインドが、急速に発展を遂げ、主要排出国となったことが要因の1つです。
先進国だけに求められる削減目標であった京都議定書には、参加国から不公平であるという声も聞こえ、アメリカが不参加を表明しました。
対象とする国の幅が、格段と広くなったパリ協定では、国際社会全体で脱炭素社会を実現しようとするという特徴があります。
各国に自主的な取り組みを促すアプローチ
パリ協定において、各国は外部から削減目標を提示されるのではなく、自主的に目標数値を定めることができます。
京都議定書の時点では、トップダウン型で削減目標が決定されてたことに比べ、いわゆるボトムアップ式で自主的に定めることができる、画期的な手法です。
ボトムアップにすることで、各国が国の経済状況と折り合いをつけ、自主的に目標を定められることができます。そのため、受動的に目標を与えられ強制されるよりも、自主的な姿勢をとることができるようになりました。
では、パリ協定が効力をもってから1年ですが、今後がどのように機能していくことが予想されるのでしょうか?
パリ協定のこれから
パリ協定が定めている、気温上昇を2度未満に抑えるという目標を達成するためには、遅くとも2075年に、できれば2050年には脱炭素社会化を実現する必要があります。
しかし、パリ協定は罰則などのシステムを持っていないため、目標を達成できるか否かは各国の積極性にゆだねられています。そんな中、いくつかの国の例を挙げながら、各国が見せている反応についてご説明します。
日本が脱炭素社会を目指すことを宣言
2020年10月、菅総理は「2050年まで、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すこと」を宣言しました。
菅総理は、温暖化対策を行うことは経済成長の妨げになるものではないことを述べ、これからは積極的に温暖化対策を行い、産業や経済へ変革を与えることが必要であるという発想の転換が求められていると述べました。
さらに、日本の企業である旭化成は、菅総理による宣言の1か月前に2030年までに石炭火力発電の割合をゼロにすることを発表しています。
上記の例のように、先進国として日本も前進しています。
カーボンニュートラル先進国、デンマーク
2050年に脱炭素社会を実現することを目標とするパリ協定に先立ち、デンマークは2025年までに「世界初のカーボンニュートラルな首都・コペンハーゲン」を目指すと宣言しました。
気候変動が異常気象を起こし、それによる大きな被害を受けたことで、デンマークは温暖化をさらに問題視する方向に向かいました。デンマークだけでなく、北欧社会では温暖化の進行を防ぐようなライフスタイルが普及しています。
上記で述べた2つの例のように、国単位での貢献に期待がかかるパリ協定。各国における削減目標を達成するためには、ひとりひとりの協力が必要不可欠となります。
そこで、今日からできる気軽なアクションをいくつかご紹介します。
気軽にできる貢献
大規模な豪雨や台風、異常気象の影響を受けているのは日本も含め、世界全体です。そのため、パリ協定を意識することは決して他人事ではありません。では、私たちにはなにができるのか、簡単な貢献をご紹介します。
- 公共交通機関を利用しよう
- 使っていないコンセントを抜こう
- 冷暖房は冷やしすぎ、暖めすぎ、つけっ放しをさけよう
- 環境にやさしい製品を消費しよう
- ミートフリーマンデーをしてみよう
- 電力会社を再生可能エネルギー重視の会社に切り替えよう/グリーン電力を買おう
上記のように、日常に取り入れやすい貢献から始めていくことが、私たちができるアクションです。ぜひ、生活の中で、いつもより少しだけ意識してみるのはいかがでしょうか?
「未来47県」
WWFの公式サイトでは、「未来47県」というサービスがあり、自分たちの地元が気候危機によってどのような状況に陥ってしまうのか、予想をみることができます。「未来47県」のサイトはこちら
さいごに。
今回の記事では、脱炭素社会を目指すパリ協定について、簡単にご説明しましたが、いかがだったでしょうか?
このまま、二酸化炭素の排出量を削減しないでいることは、自然界だけでなく、人間の生活までも、持続可能ではないものにしてしまいます。
まさに、2025年までのあと4年が正念場だと言われている環境問題。今日から少しずつ、できることを始めて見てはいかがでしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。





