ゼロエミッションとは?脱炭素における重要性と日本企業の取り組みを紹介

気候変動

排出ゼロ構想ともいわれる「ゼロエミッション」は、これからの地球環境保護には欠かせない取り組みのひとつ。

今回は、そんな「ゼロエミッション」の言葉の意味や、活動を積極的に行う企業の具体例等をお届けして参ります。

より良い地球環境のために、何かできることはないのかとお考えの方はぜひご覧ください。

 

ゼロエミッションの意味とは?

「ゼロエミッション」とは、産業等の活動から発生するものをゼロに近いものにするため、資源の有効活用を目指す理念のこと。

具体的には、ある産業の副産物や不要物・廃棄物を別の産業に持続的に有効利用することなどが挙げられます。

日本では「ゼロエミッション」という言葉が生まれる前から考えられていた構想で、現在すでに様々な企業が取り入れています。

2020年10月の「TCFDサミット2020」では、国内300社以上が「ゼロエミ・チャレンジ」といわれるゼロエミッションに向けた活動をしていると発表されています。

さらに2023年は、今まで世界の産業界、金融界、政府、規制当局、国際機関等を含む幅広い分野からの参加を得ていたイベントが統合され「GGX×TCFDサミット」として実施されることになりました。

また、東京都では「ゼロエミッション東京戦略」を策定し、プラスチック削減プログラムなど3つの戦略を打ち立てています。

 

ゼロエミッションの語源

ゼロエミッションは数字の零を表す「zero」と排出を表す「emission」を組み合わせた言葉です。

排出ゼロ構想ともいわれ、1994年に国連大学によって提唱されました。

ゼロエミッション研究構想(Zero Emissions Research Initiative)とも言われ、そこから「ZERI」と略されることもあります。

日本では前述のように「ゼロエミ」と略されることもあり「東京ゼロエミポイント」(設置済みのエアコン、冷蔵庫等を省エネ性能の高いものにすることでLED割引券がもらえるなど優遇が受けられるキャンペーン)などに使われることもあります。

 

ゼロエミッションの重要性

 ゼロエミッションとは何かを簡単に解説
ゼロエミッション社会を推し進めることは、ごみを減らすこと、そして二酸化炭素の減少が期待できるといわれています。

ゼロエミッションの最終的な目標は、生産活動で生まれる廃棄物の埋め立て処分をゼロに近い状態にすること。日本のごみの埋め立て地場も数十年後にはすべて埋まってしまうといわれており(※1)、その改善策としてゼロエミッション活動は期待されています。

※1
環境省:循環型社会の形成
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r03/html/hj21020301.html

さらに、「ゼロエミッション」では二酸化炭素等を排出しないことを条件に掲げているため、ゼロエミッションが浸透していくとより地球に優しい世界になることが期待されています。

二酸化炭素を減らすことは、地球温暖化にとってとても重要なこと。

二酸化炭素の減少には様々なアプローチがありますが、今回ご紹介しているゼロエミッションというのも、有効だと考えられています。ゆえに、地球環境のためにもゼロエミッション活動はこれからの社会に欠かせないと考える人が多いのです。

 

ゼロエミッションの事例

ゼロエミッションと一口に言っても、その事例はさまざま。日本国外問わず、さまざまな企業・団体がその活動を行っています。

まずは、国・自治体としてのゼロエミッションの取り組み事例をご紹介します。

 

エコタウン

日本の環境省では、「エコタウン事業」という事業を1997年度から始めています。これは、地域特性を生かして地元企業の産業廃棄物等をエネルギー化するというもの。

先進的な環境調和型のまちづくりを目標としており、多くの自治体が取り組んでいます。

実際に二酸化炭素の排出量や廃棄物量を抑えられるのはもちろん、産業振興・地域活性化にもつながっており、自治体や地元企業にとっても恩恵があることで知られています。

神奈川県川崎市や福岡県北九州市、富山県富山市などさまざまな地域で実践されています。

 

二酸化炭素の排出量制限

世界には、二酸化炭素の排出量を制限している国もあります。

例えばヨーロッパでは自動車から出る二酸化炭素の排出量を95g/kmと将来的にすると発表(CAFE規制)。ホンダや日産といった多くの自動車メーカーが、これに対応するべく「ゼロエミッション・ビークル」(走行時に二酸化炭素等の排出ガスを出さない車)などの地球に優しい車の開発をしています。

また、ドイツでは2019年に「連邦気候保護法案」が承認されました。これは、2030年までに二酸化炭素等の排出量を1990年比で55%削減するというものです。

日本も、2020年に「2050年CO2排出実質ゼロ(カーボンニュートラル宣言)」を掲げています。

東京都では特に二酸化炭素排出量の削減には力を入れており「2030年までに50%削減(2030・カーボンハーフスタイル)」を宣言。目標とする比率にするため、2030年までに様々な取り組みを強化するとしています。

 

水素、アンモニアの活用

二酸化炭素を排出しない新たな燃料として期待されているのが「アンモニア」。

株式会社JERA、日本郵船、商船三井などが研究しており、シンポジウムやセミナー、論文等でも話題となっています。

 

日本企業の取り組み

ゼロエミッションの具体例

産業の副産物や廃棄物等を別の産業にて有効利用するというゼロエミッションは、さまざまな分野の日本企業でも取り組まれています。

続いては、先述の「ゼロエミ・チャレンジ」に参加する企業を中心に実際にゼロエミッション活動を行っている企業の実例をご紹介します。

 

積水ハウスグループの事例

ハウスメーカー「積水ハウス」では、工場での生産時に出る金属くず、木くず、汚泥等をリサイクル。リサイクルされた素材は建材メーカーに戻すほか、製紙業などに活用しています。

2018年には、リサイクル率100%(うちマテリアルリサイクル94.9%)を実現。

これは新築住宅を作るときだけではなく、リフォームやメンテナンス現場などさまざまな建築現場でも行われており、グループ全体で資源循環体制を強化しているといえます。

 

キリンホールディングス株式会社の事例

飲料メーカー「キリン」では排水を浄化するときに出る「バイオガス」を工場の電力として活用しています。

さらに、排水浄化時に出る蒸気も活用するなど積極的なゼロエミッションをしています。

また、自動販売機の電力削減に取り組むなどのにエコ活動も行っています。

エコのためなら同業他社とでも協力をするというキリンの理念が現れています。

 

TOTOの事例

水まわり住宅総合機器メーカー「TOTO」では、工場から出る衛生陶器屑という廃棄品を道路・トンネル等の施工に活用しています。

建材用塗装として検討される機会も増えているとのことで、需要も増えていきそうです。

さらに、海外の製造グループ会社でもゼロエミッション活動を進めるとしており、今後のゼロエミッション活動の延長・広がりも期待できます。

 

ローソンの事例

コンビニエンスストア「ローソン」では、店舗から排出される食品廃棄物を飼料化・肥料化する取り組みをしています。

売れ残り食材は粉砕・加工され養豚農家や飼育メーカーへ出荷。

また、売れ残り食材を発酵させそれを原動力とした発電システムも生み出しています。

 

福島エコクリート株式会社の事例

石炭エネルギーセンター、日本国土開発株式会社、新和商事株式会社の3社が合同出資をして作った「福島エコクリート」では、石炭火力発電所から発生するフライアッシュ(石炭灰)を原料とした土木資材を作っています。

福島県にある発電所のフラッシュアイを使っているので「地産地消」のものとしても注目されています。

また、この素材は福島復興にも役立つ素材としても期待されています。

 

味の素の事例

味の素グループでは、調味料を生産するときに出る「副生液」といわれる廃棄物を肥料や飼料に転換。

国内はもちろん、海外の工場でも高い比率の資源化率を達成しています。

 

ゼロエミッションの課題とは

二酸化炭素や廃棄物の削減に役立ちそうなゼロエミッションですが、課題が残っているのが現状です。

具体的には、廃棄物を資源としてを再活用するときにさらなるエネルギーを必要とする可能性があるということ。

資源の加工はもちろん、次の活用場所へ運ぶときのエネルギーで二酸化炭素がさらに増えることも考えられます。

今後はそういった課題をクリアすることが、2030年、2050年の目標を達成し、ゼロエミッション活動を広げるポイントとなるでしょう。

 

さいごに。循環型社会のためにできること。

循環型社会を作る上で欠かせない、ゼロエミッション。今回はそんなゼロエミッションの概要や国内企業の取り組みなどをご紹介してまいりました。

2020年、2030年、そして2050年。

これからの世界がどう変わっていくかは、とても気になるところかと思います。限りある資源を有効に使うというのは、これからの社会の課題。ゼロエミッション活動を行う企業には、今後も注目していきたいところです。

それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Ethical Choice編集部
Ethical Choice編集部です。エシカルな生活を送る知恵、サスティナビリティに関する取り組み、環境問題に対するソリューションを発信いたします。

【免責事項】

※本記事に掲載の情報は、公的機関の情報に基づき可能な限り正確な情報を掲載しておりますが、情報の更新等により最新情報と異なる場合があります。

※本記事はエシカルな情報提供を目的としており、本記事内で紹介されている商品・サービス等の契約締結における代理や媒介、斡旋をするものではありません。また、商品・サービス等の成果を保証するものでもございません
クリップボードにコピーしました。