ラナプラザ崩壊事故|ファストファッション産業の裏側で起きた、史上最大の悲劇とは

エシカル

※写真はイメージです
 
命のリスクと引き換えに、自分たちは買うことも、着ることもないであろう服を、製造している人々がいます。
 
この問題が浮き彫りになったきっかけが、バングラデシュで2013年に発生した、ラナプラザ崩壊事故。死者、行方不明者、負傷者の全てを合わせて、4000人以上の犠牲者を出した、ファッション業界史上最悪の事故です。
 
この事故は私たちとは無関係ではなく、一度は買ったことがあろうファストファッション界の歪みによるものでした。スタイリッシュで安く、最新のトレンドを、常に取り入れることができ、かつ安価で消費者には都合のいいファストファッションですが、その裏側で残酷で悲しい事故は起きたのです。
 
今回の記事では、ラナプラザ崩落事故の概要と原因や、ラナプラザ事故後の企業による取り組み、消費者として私たちができることをご紹介いたします。
 

ラナプラザ崩落事故とは

2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊において発生したラナプラザ崩落事故。
 
世界的アパレルブランドの、下請け工場が数多く存在するビルが、朝のラッシュアワーに崩壊し、死者1,127人、行方不明者500人、負傷者2500人にものぼる犠牲者を出しました。
 
ラナプラザ崩落事故は、犠牲者の規模からファストファッション業界史上最悪の事故と呼ばれ、世界でも類を見ないほど悲惨な産業事故です。
 

防げたはずの悲劇はなぜ起きてしまったのか

事故から7年経った現在でも、事前に防げる可能性があったと嘆かれています。

当時、ラナプラザの労働者がビル崩壊の危険性について訴え、現地警察も退去を勧告していたのです。
 
しかし、利益を優先したオーナーが、出勤を拒否した労働者に対して解雇をほのめかすことで脅迫し、従業員を自宅に返さず徹夜で労働させたことにより、大惨事を防ぐことはできませんでした。

この想像もできないほどの労働環境は、ファストファッション業界やバングラデシュの繊維業界が抱える課題の氷山の一角です。
 
では、どうしてラナプラザ崩落事故のような悲劇は起こされてしまったのか。

ファストファッション業界に隠された裏側をご説明していきます。
 

ラナプラザ事故という悲劇に隠された、ファッション業界の裏側

らなぷらざ、rana plaza
事故当時、ラナプラザに入居していた工場の労働環境はスウェットショップ(訳:搾取工場)と分類される、劣悪なものだったとわかっています。
 
主な問題点は以下の3点。

  • 作業内容や労働時間に見合わない低賃金
  • 健康状態に悪影響を及ぼす劣悪な労働環境
  • ずさんな安全対策、かつ管理体制

 
上記の3点はラナプラザにだけ当てはまるのではなく、大手アパレルブランドの下請け業者をはじめとする、途上国の繊維業界において、たびたび指摘される課題です。
 
では、問題を1つずつ深堀して見ていきます。
 

労働に見合わない低賃金

まず、1つ目の問題である低賃金について。
 
事故当時、ラナプラザを含む、バングラデシュの繊維業界における平均月収は、たったの3900円ほどでした。1か月間、早朝から夜中まで、集中力が求められる作業を繰り返しても、収入として手元に残るお金は、日本のアルバイトが4時間で超えてしまう額。(東京都の最低賃金1,013円で計算)
 
このような低賃金問題は、ファストファッション業界における価格競争が影響しています。なぜなら、競合ブランドより魅力的な価格で、私たち消費者に商品を届けるために、製造の段階における人件費を削減しているからです。
 
そのため、途上国の工場スタッフがいくら働いても、雀の涙ほどの収入しか得られません。
 

放置される劣悪な労働環境

2つ目に、人権侵害にもつながりかねない、粗悪な労働環境の問題についてです。
 
長時間労働、肉体的かつ精神的虐待が多発している繊維業界。
 
冒頭でも述べた通り、女性の雇用が大半をしめるこの業界では、男性マネージャーやオーナーから、女性労働者に対するパワハラやセクハラが存在します。
 
トイレ休憩なしのプレッシャー、飲食に適さない汚染された水、上司からの暴行。まさに人権が無視されている現場で、女性たちが声をあげることすら恐怖を感じる状況が現実なのです。
 

悲劇を防げない、ずさんな安全対策

3つ目の問題として、安全対策の欠如があげられます。
 
ラナプラザ事故の元凶ともいえる、ずさんな安全対策
 
1つ目の項目でも述べた通り、繊維業界において、コスト削減のために下請け業者が老朽化した建物を使うパターンが多くあります。
 
また、ラナプラザは、正式な許可なしに建築された建物で、3階以上は全て違法に増設されたフロアでした。さらに、事故の原因となった振動を引き起こした4台の大型発電機もまた、違法に設置してされていたことがわかっています。
 
利益を重視するばかり、無視されてしまう安全への配慮。ラナプラザ事故以外にも、バングラデシュでは繊維工場での火災など、安全対策の欠如により多くの被害が発生しています。
 

貧困ゆえに劣悪な環境でも働かざるを得ない現実

ここで、皆さんに理解していただきたいことは、現地の人々は劣悪な環境でも、働かざるを得ない、という現実。
 
バングラデシュの繊維業界において、貧しい家庭出身の労働者が大半を占めています。貧困にいる人々が、その日の生活費を稼ぐために、仕方なくスウェットショップ(訳:搾取工場)で働くという負の連鎖を変えない限り、この問題の解決は遠いものになるでしょう。
 
しかし、貧困には多くの課題があり、すぐに解決できる問題ではないため、少しずつでも労働環境を改善できるような取り組みが鍵となります。
 
実際に、アパレルブランドもラナプラザ事故を受け、動き始めています。
 

ラナプラザ事故後、問われたアパレル業界の在り方

ここからは、アパレルブランドがどのように対応しているのかを見ていきたいと思います。
 
悲惨な事故から1か月後、日本でも知られる「H&M」や「ZARA」などの親会社である「INDITEX」をはじめとし、ヨーロッパ発祥のアパレルブランドの多くが動きを見せました。これらの企業が、ずさんな安全対策を改善するために、安全監視機関を設けたのです。
 
バングラデシュの繊維業界において、火災事故や崩落事故の再発を防ぐための協定、「The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh」(通称アコード)に、200以上企業が署名をしました。
 
日本からも、ユニクロが世界的企業につづいて、署名をしています。
 
ただ、それで労働環境が全て改善されたかというと、そうではありません。また、事故から月日が経つにつれて、悲惨な記憶が風化され、以前の劣悪な環境に戻ってしまうリスクもあります。
 
そのため、企業や政府の対応と同時に、私たち個人のアクションが必要とされます。
 

自分の服が手元に届くまでを考えてみよう

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皆さんは、ファッションレボリューションウィークという言葉を聞いたことがありますか?“Who made my clothes” (だれか私の服を作ったの?)”が合言葉のこのキャンペーン。
 
「自分の服は誰が作って、作り手はどのような労働環境、生活環境にいるのか」を考えるきっかけを与えることを目的に、行われました。
 
自分が着ている服の原産国について、日常で振り返る機会は少ないと思いますが、ファッションレボリューションウィークのように、ぜひ服のタグを確認していただげればと思います。
 
新しい服を買う際に、値段やデザインの魅力だけで判断するのではなく、その服がどのように、そして誰によって作られたのか、という点を踏まえて、選択してみることをおすすめします。
 

さいごに。作り手も幸せにする消費をしよう。

今回は、ラナプラザ事故についてご説明しながら、ファストファッション業界の裏側を紐解きました。当記事に、ラナプラザ事故に関わっていたブランドや、ファストファッション業界を非難しよう、という意図は微塵もありません。
 
ただ、この記事が、消費者の皆さんにとって、衣服の選択について改めて考えられるきっかけになればと思います。
 
好みの服を買って、自分が嬉しくなるのと同時に、作り手も幸せになってくれる消費をエシカル消費と言いますが、そんなみんなが幸せになる消費をしてみませんか?
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Ayaka Sato
Ethical Choiceのインターン。自分のアクションで、地球のどこかの誰かが幸せになってくれる、そんな未来を描いて日々奮闘中。
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