アドボカシーとは?社会課題解決に向けた日本と海外での活動事例をご紹介

サスティナブル

あらゆる社会課題解決のカギとなる「アドボカシー」。この記事では、貧困や紛争、教育、人権などの分野で使われる「アドボカシー」の意味を解説します。
 
日本や海外での活動事例や、活動の目的もご紹介しますので、社会課題解決に向けた活動や国際協力に興味がある方はぜひご覧ください。
 

アドボカシーとは?

 
アドボカシー(英語:advocacy)とは、日本語で「擁護」や「支持」などの意味を持つ言葉。
 
貧困や紛争、教育、人権などの分野では、社会的弱者やマイノリティの権利を擁護するという意味でアドボカシーは使われています。
 
アドボカシーの対象者となる社会的弱者とは、社会のなかで著しく不利な状況に置かれる人のことで、高齢者や子ども、身体障害者がその例です。
 
同様にアドボカシーの対象者となるマイノリティ(英語:minority)は、日本語で「少数派」を意味する言葉。人種、民族、宗教、性的指向、性自認がマジョリティ(多数派)に当てはまらない人や集団を指します。
 
アドボカシーという言葉が使われるのは、貧困や紛争などの分野だけではありません。医療や介護、福祉の分野では、自分の意思をうまく伝えられない患者、高齢者、障害者の権利を擁護し、意思を代弁する意味でもアドボカシーは使われています。
 
例えば看護師や介護福祉士は、患者や要介護者、高齢者のアドボケイト(権利擁護者、代弁者)として権利を擁護し、人間としての尊厳を尊重しなくてはなりません。医療や介護、福祉の分野でのアドボカシーは、当事者が権利主体としての認識を強める「エンパワメント機能」も果たしているのです。
 

アドボカシー活動とは?

 
「アドボカシー活動」とは、社会的弱者やマイノリティの人権を擁護するために、NGOやNPOなどの非営利団体が中心となって実施する活動です。アドボカシー活動の種類は、「政策提言」と「広報活動」の2つに大別されます。
 
アドボカシー活動の一つである「政策提言」は、政策や制度を変えるようNGO・NPO団体などが直接呼びかけ、社会を変革していく活動です。
 
政府に呼びかけるというと、アドボカシー活動は特別なものであると感じる方もいるかもしれません。しかし、アドボカシー活動が盛んなアメリカでは、メールや電話、新聞への意見広告など、あらゆる手段を用いて政策提言が行われています。
 
もう一つのアドボカシー活動である「広報活動」は、NGO・NPO団体による周知活動やキャンペーンを通じて社会課題の知識を深め、一人ひとりの行動に結びつけるための活動です。
 
広報活動により多くの人が社会課題に関心を持つようになれば、NGO・NPO団体にとどまらない広範囲でのアドボカシー活動が実現し、最終的に政策や社会の仕組みを変えることにつながるでしょう。
 

アドボカシー活動を行う目的

 

続いて、アドボカシー活動を行う目的を見ていきましょう。NGO・NPO団体が掲げているアドボカシー活動の目的には次のような例があります。
 

  • 子どもに関する課題への理解を広げ、子どもの権利を実現する
  • 移民や難民、少数民族やセクシュアルマイノリティ、障害のある子どもたちの権利を守る
  • ジェンダー平等や女性の社会的地位向上を目指す
  • SDGs(持続可能な開発目標)を実現する

これらのアドボカシー活動の目的に共通しているのは、「誰の権利を擁護するのか」「どのような社会を目指すのか」など、NGO・NPO団体が果たすべき機能・役割が明確になっている点です。
 
目的からアドボカシー活動の具体的なイメージをしやすくすれば、NGO・NPO団体の活動に携わってこなかった人がアドボカシー活動に参加することにもつながるでしょう。そして、NGO・NPO団体の運営方針などによって、アドボカシー活動を行う目的は変わってきます。
 

政策提言や広報活動の働きかけの対象

 
続いて、政策提言や広報活動などのアドボカシー活動の働きかけの対象を見ていきましょう。
 
アドボカシー活動を通して誰に働きかけるかも、NGO・NPO団体が果たす機能やアドボカシー活動の目的によって変わってきますが、「政府」と「政府以外の社会全体」の2つに大別されます。
 
アドボカシー活動の働きかけの対象である「政府以外の社会全体」に含まれるのが、企業幹部などの政策決定権を持つ人や、一般市民です。
 
政策変更や新政策立案を多くの人が望んでいると示せないにもかかわらず、政府や企業に働きかけると、意見が反映されずアドボカシー活動がうまく機能しない可能性があります。このような事態を避けるため、社会課題への認識を広めることを目的とした一般市民への働きかけもアドボカシー活動では重要です。
 
政策決定権を持つ人から、これまで社会課題解決への取り組みをあまり行ってこなかった人まで、あらゆる人を対象にできる点がアドボカシー活動の特徴といえるでしょう。
 

NGOやNPOによる活動事例

 

具体的にどのようなアドボカシー活動が実施されているのでしょうか。日本や海外でアドボカシー活動を行うNGO・NPO団体の事例をご紹介します。
 

日本ユニセフ協会のアドボカシー活動例

 
ユニセフ学校募金のネットワークを通じた啓発活動を実施してきた日本ユニセフ協会。
 
1990年代初頭からはユニセフ本部と連携し、「子どもの権利条約」への同意を日本政府に求めるキャンペーンを皮切りに、様々なアドボカシー活動を実施してきました。
 
2020年にはアドボカシー活動の一環として、日本の関係府省庁、企業、市民社会などが参加する「子どもに対する暴力撲滅行動計画」策定過程に参加。インターネット上で集められた子どもたちからの意見をもとにプランづくりを進めるアドボカシー活動を行いました。
 

ワールド・ビジョン・ジャパンのアドボカシー活動例

 
寄付・募金で世界の子どもを支援する国際協力NGOのワールド・ビジョン・ジャパン。
 
様々な社会課題のなかでも、「SDGs(持続可能な開発目標)」「子どもの権利」「子どもに対する暴力」「教育」「紛争・難民」「保健・栄養」「人身取引」の分野に力を入れてアドボカシー活動を実施しています。
 
例えば、SDGsの目標のなかでアドボカシー活動を特に強化しているのが、目標16.2「子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する」です。
 
この目標を達成するべく、国際機関、各国政府、市民社会組織、企業などから成る「子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル・パートナーシップ(GPeVAC)」の一員として活動を行ってきました。
 
さらに、日本政府がGPeVACに積極的に関与するよう、関係省庁と議論したり、セミナーを開催したりするなどのアドボカシー活動を行っています。
 

プラン・インターナショナル・ジャパンのアドボカシー活動例

 
世界70カ国以上で活動する国際NGOのプラン・インターナショナル・ジャパン。
 
子どもの権利擁護やジェンダー平等推進に向けたアドボカシー活動を行っており、プラン・インターナショナル・ジャパンが国連に働きかけたことで、毎年10月11日が「国際ガールズ・デー」に制定されました。
 
10月11日に合わせて白書を毎年発表し、世界の若年層の女性や女の子が置かれている現状と課題の提示や、解決に向けたアドボカシー活動を行っています。
 

チャイルド・ファンド・ジャパンのアドボカシー活動例

 
子どもの健やかな成長、家族と地域の自立を目指した活動をしている認定NPO法人のチャイルド・ファンド・ジャパン。
 
アドボカシー活動として、「子どものセーフガーディング」の整備・強化を進めています。子どものセーフガーディングとは、団体自体の活動のなかで子どもに危害をもたらすことのないよう、予防や対応をする取り組み。
 
このアドボカシー活動を始めるにあたり、英国に拠点を置く国際NGOのKeeping Children Safeが作成した子どものセーフガーディングの国際基準を満たす組織を目指してきました。
 
この国際基準をもとに、独自の「子どものセーフガーディング方針」を作成し、子どもを守るうえで有効な体制や手続きの整備を進めるアドボカシー活動を行っています。
 

ジョイセフのアドボカシー活動例

 
女性の命と健康を守るために活動している日本生まれの国際協力NGOのジョイセフ。
 
国や行政、国会議員、マスメディアに対して、開発途上国の女性が置かれている現状を伝えるアドボカシー活動を行っています。
 
また、英ロンドンに本部を置き、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利、呼称SRHR)を推進する国際NGOの国際家族計画連盟(IPPF)の国際連携パートナー兼東京連絡事務所としてアドボカシー活動を実施。
 
IPPFの活動を日本国内に日本語で広め、日本政府や日本の国会議員に対して働きかけるアドボカシー活動も行ってきました。
 

社会課題への関心を示すことが解決への一歩

 
貧困や紛争、医療、介護、福祉などあらゆる分野で使われる「アドボカシー」。
 
今回は、貧困や紛争などの分野で使われるアドボカシーの意味や、アドボカシー活動を行う目的、働きかけの対象、NGO・NPO団体による日本や海外でのアドボカシー活動事例を解説しました。
 
高齢者や障害者、子どもの権利擁護のために当事者の主張を代弁し、既存の政策を変えたり新たな政策を定めたりすることは、とても難しいと感じる方も多いかと思います。
 
しかし、アドボカシー活動を通して、多くの人が社会課題に関心を寄せていることを示していくことが、社会課題解決への一歩なのではないでしょうか。
 
それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Yuka Hirose
ベトナムとカンボジアで行った教育関連の活動をきっかけに、国際協力や環境問題に興味を持つ。大学では化学を専攻し、バイオマスプラスチックについて研究。現在はライター・英日翻訳者として活動。
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