アファーマティブアクションとは?世界と日本における現状と問題を解説

サスティナブル

「積極的格差是正措置」とも訳される「アファーマティブアクション」。
 
この記事では日本ではあまりなじみのない言葉でもある「アファーマティブアクション」という言葉の意味や、問題点、日本の現状などについてご紹介して参ります。
 
誰もが平等に活躍できる未来に向けて、もっといろんなことを知りたいという方もぜひご覧ください。
 

アファーマティブアクションとはどういう意味?

アファーマティブアクションは日本語で「積極的格差是正措置」と訳されます。
 
もともとは肯定的という意味を持つ英語の「アファーマティブ」(affirmative)と動作・作用を意味する「アクション」(action)を組み合わせた言葉です。
 
具体的には民族や人種等による弱者集団に対する改善措置のことを言い、差別撤廃に深く寄与する取り組みとなっています。
 
この取り組みは差別の撤廃のほか、格差の改善に役立つといわれており、日本では主に同和問題の解消、「ポジティブアクション」といわれる女性差別問題の解消、障害者に対する積極的雇用等のアクションが起こされています。
 

アファーマティブアクションとポジティブアクションの違いとは?

アファーマティブアクションとよく似た言葉である「ポジティブアクション」ですが、こちらはどちらかといえば女性差別問題を是正するためのもの。
 
男性と女性の格差というのも民族差別と同様、世界中で古くから根強く残っています。
 
ポジティブアクションとは男性に比べ権利の少なかった女性たちの権利を向上させ、女性不利の状況をなくそうというものです。
 
こちらは日本の他、ヨーロッパ等でも積極的に取り入れられています。
 
具体的には、企業の役職に就く人間のうち、決まった割合を女性とすることが義務付けられるなどの措置があります。
 

積極的格差是正の対象者は?

アファーマティブアクションの対象は、主に歴史的に差別を受けてきた人々となっています。
 
アメリカでは、歴史的に黒人やヒスパニック系の人々が過去に差別を受けてきたという経緯があります。
 
現在も根強く差別意識は残っているといい、その結果、進学や就職の際に不利となってしまうケースも多々あります。
 
そのため、アファーマティブアクションといった是正措置が重要になるのです。
 
また、アファーマティブアクションの対象者には女性や障碍者をはじめ、日本の場合には同和地区の人々やアイヌ民族の人々を含む場合もあります。
 
このように、歴史的に強い差別を受けてきた人々がアファーマティブアクションの対象者となることが多々あります。
 

アファーマティブアクションが生まれた背景とは

アファーマティブアクションは、1965年にアメリカの36代目大統領でもあるジョンソン大統領が差別是正措置を求めたことが起源といわれています。
 
アメリカでは過去より根強い人種差別が行われており、それを解消するためのアクションとして生まれました。
 
具体的には特定の民族や階級の人々の大学に対する合格枠確保や雇用の割り当て指示などを行い、平等を目指したものです。
 
現在はアメリカの他、インド、マレーシア、南アフリカ共和国などで同様のアクションが取り入れられています。
 
ただ2018年7月には、アメリカにて大学入学時の少数派優遇措置が撤回されており、今後の行方にも注目が集まっています。
 

海外における実例とは


アファーマティブアクションとひとくちに言っても、その政策や対象者は国によって様々です。
 
続いては、主な海外のアファーマティブアクションの実例をご紹介します。
 

例①優先入学

主に進学率が低いといわれるアフリカ系アメリカ人やラテン系人々の学力向上のために作られた制度です。
 
具体的には入学試験の点数を加点するなどの措置が取られています。
 
なお、アジア系の人々に対しては成績が全体として高いことを理由に修正点はありません。
 

例②優先雇用

アメリカでは連邦機関や地方自治体での雇用の際、アフリカ系アメリカ人や少数民族及び女性を一定数採用するよう働きかける指導があります。
 
また、連邦と一定額以上の事業契約を行う民間企業などに対しても積極的にアファーマティブアクションを行うよう働きかける、解雇の際も白人を先に解雇することなどを指示するなどされています。
 

例③優先昇進

EUでは、大手上場企業の非業務執行取締役に男性と女性を一定の割合(非業務執行役員の40%、または役員全体の33%)にすると定めており女性の活躍を積極的に推進しています。
 
またアメリカでは白人警察官が一人昇進するたびに、自動的に黒人警察官も昇進させるという制度が取られていたこともあり、積極的なアファーマティブアクションが行われています。
 

日本における実例とは

日本ではあまりなじみのないアファーマティブアクションという言葉ですが、実は日本の教育機関や企業の中にはそういった活動を行っているところも多々あります。
 
続いては、そんな日本のアファーマティブアクションの実例をご紹介します。
 
同和問題等に対するアファーマティブアクションかつては日本にも、同和問題といわれる根強い差別の問題がありました。
 
そういった差別問題を解消するため、国や自治体は「同和対策事業特別措置法」として優遇策をとってきています。
 
具体的には、高校、大学等への優先入学、公務員の採用優遇措置といった措置が取られていました。
 
ただし、近年は差別意識が薄まってきたことなどから廃止される事例も増えてきているのが現状です。
 
また、在日韓国・朝鮮人、アイヌ、奄美群島出身者などに対する特別推薦枠を設けている大学もあります。
 

男女差別解消に向けた動き

日本では、男女共同参画基本計画に基づき大学の女性優遇入試や、女性優遇採用などが行われているところもあります。
 
女性優遇入試は「女子特別枠」や「女子特別推薦」などを掲げる大学も多々あります。
 
東横イン、TOTOなど実際に女性を優先して採用する企業もあり活発なアファーマティブアクションを行っているという見方もあります。
 
ただし、日本のそれは諸外国と違い、女性優遇は民間企業を対象とする傾向もあるため「男性に対する逆差別ではないか」「女性だからと言って安易に優遇するのはいかがなものか」といった意見もあり難しいと考える企業もあるようです。
 
また、逆に「男性保育士活躍推進プラン」を掲げる地域もあるなど、今までは女性が多かった場面に積極的に男性を採用しようという動きもあります。
 
ただ、こちらに対しても賛成、反対それぞれの意見が分かれるところでもあります。
 

障碍者に対する雇用

「障害者雇用枠」といわれる、障害者に対する雇用も推進されています。
 
これは、法定雇用率に不足する数に対し納付金を徴収するという仕組みとなっており、1976年には「身体障害者の雇用が事業主の義務」と位置づけられています。
 
その後、知的障碍者や精神障碍者等も対象となりその範囲を広げています。
 

知っておきたいアファーマティブアクションの問題点


差別をなくし、平等を目指すための是正的な措置であるアファーマティブアクションですが、実は問題点も指摘されています。
 
続いては、アファーマティブアクションを知る上で外せない、問題点についてご紹介します。
 

問題点①逆差別が起こる可能性

まず第1の問題点は、「逆差別」が起こってしまう可能性です。
 
例えば、能力は十分で本来ならば合格のはずなのに特別枠があるために合格枠には入れず、不合格となってしまうなどがこれに当たります。
 
実際に大学入試にて合格点があったにも関わらず不合格となったとして、裁判が起こった例もあります。
 
なお裁判によっては「違憲である」としてその後に入学が認められた判例もあります。(バッキ判決など)
 
また過去に「女性枠」として女性の優先入学をうたった九州大学では、「男性への教育差別では?」との批判が多数寄せられたため、取りやめとなった経緯もあります。
 
つまり、アファーマティブアクション非対象者を逆に差別しているのではないかというのが問題となっているのです。
 

問題点②個人の資質が評価されづらい

第2の問題点は、個人の資質が評価されづらくなるということです。
 
例えば企業にて昇進・昇給したとしても、それが本人の努力・資質によるものなのか、あるいはアファーマティブアクションの対応によるものなのかが明確でないと、従業員のなかで不満が生まれます。
 
それは教育現場等でも同様で、自分が何故認められたのか、逆にどうして認められなかったのかが分かりづらくなってしまうことが予想されます。
 
特に個人の能力や価値観を尊重する傾向にある昨今では、性別・人種・民族等でひとくくりにするという考え方には疑問を持つ人や反対を唱えるも多いようです。
 
また、日本では「法の下の平等」をうたっており違憲に当たる可能性もあるとされています。
 

問題点③差別を助長する可能性がある

第3の問題点は、マイノリティといわれる人種・民族・女性への差別をより助長してしまう可能性があるということです。
 
具体的には本来能力を持っているにもかかわらず「ただ優遇されただけでは?」と周りに思われ、差別的な考えをより助長してしまうのではないかという懸念もあります。
 
実際にアメリカでは、「少数民族の医者は、アファーマティブアクションにて合格しただけではないか」とみなされ「藪医者では?」と思われることもあるといいます。
 
また、女性優遇の企業などでは仮に能力があったとしても「能力がないのに女性というだけで昇進した」と思われることもあるでしょう。
 
このような場合のように差別をより助長してしまうのではないかという懸念もあり、アファーマティブアクションがマイナスに働いてしまう可能性があります。
 
こういった理由から、少数民族の人や女性等への差別をより助長してしまうという見方もあります。
 

問題点④対象者の線引きが難しい

第4の問題点は、対象者の線引きが難しいということです。
 
例えばアメリカの大学などの教育機関では、アフリカ系アメリカ人、ラテン系の人々の進学率が低いということで一定枠の確保を行っています。
 
ですが、非白人でもある東洋系およびインド系のアジア人は、成績が全体として高いことを理由に優遇措置は受けられません。
 
また、女性を優遇するといってもトランスジェンダーの方などは対象となるのかどうかというところも議論になっていくでしょう。
 
差別的扱いを受けるのは同様であるのに、優遇措置は受けられないということで不利になるのではと憤る人々もいます。
 

さいごに。誰もが輝ける世界を作るために。

「積極的格差是正措置」ともいわれるアファーマティブアクションの言葉の意味や、問題点、実例等をご紹介しました。
 
世界ではもちろん、日本でも需要視されるアファーマティブアクションですが、どういった感想を持たれましたでしょうか。
 
社会的弱者を救いつつも、個々の能力もきちんと評価される。そんな未来を実現させるためにどうしたらいいか、じっくり考えていきたいものです。
 
それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Ethical Choice編集部
Ethical Choice編集部です。エシカルな生活を送る知恵、サスティナビリティに関する取り組み、環境問題に対するソリューションを発信いたします。
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