アセクシャル(エイセクシュアル)とは?ノンセクシャルとの違いも解説

サスティナブル

LGBTに続き、LGBTQIAやLGBTQ+などのセクシャルマイノリティ(日本語訳:性的少数者)を表す言葉が広がりつつあり、近年では、LGBTQIAのモチーフであるレインボーフラッグを手にした活動が街中でも見られるようになりました。
 
セクシャルマイノリティに関心を持っている方のなかには、「アセクシャル」という言葉を聞いたことがあるものの、アセクシャルの意味や定義がまだわからないという方もいるかもしれません。
 
この記事では、LGBTQIAの「A」にあたるアセクシャル(アセクシュアル・Aセクシャル)の意味を解説します。
 
アセクシャルとほかのセクシャリティの違いも解説しますので、セクシャルマイノリティの知識を深めたい方はぜひご覧ください。
 

アセクシャル(エイセクシュアル)の意味

 
アセクシャル(エイセクシュアル)とは、恋愛感情の有無に左右されず、他人に対して性的欲求をまったく抱かない、もしくは抱くことが少ないセクシャリティのこと。日本では「無性愛者」と呼ばれることもありますが、愛情や結婚願望がないわけではなく、誤解されやすいセクシュアリティの1つです。
 
2001年に設立された世界最大規模のアセクシャルのオンラインコミュニティ「the Asexual Visibility and Education Network(AVEN)」は、アセクシャルを「性的魅力や、性的関係を持ちたいという本質的な欲求を感じない人」と定義(1)
 
また、アセクシャルは必ずしも先天的なものではなく、後天的な要因でアセクシャルになることもあるとされています。
 
LGBTQIAをもとに考えると、L(レズビアン)・G(ゲイ)・B(バイセクシャル)・T(トランスジェンダー)・Q(クエスチョン)・I(インターセックス)の次の「A」にあたるのがアセクシャルです。
 
LGBTQIAの意味や特徴は以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
 
LGBTQIAを詳細に解説した記事
 
最近では、オンラインでできるアセクシャル自己診断があるため、こうした診断を通じて自分がアセクシャルに当てはまると気づく方もいるでしょう。
 
もし当てはまった場合も、アセクシャルは自分を構成する大切な要素。誰かに決められるものではありません。
 
(1)出典:The Asexual Visibility and Education Network General FAQ
 

アセクシャルの割合

 

 
アセクシャルに関する調査・研究事例はまだ少ないため、全人口に対するアセクシャルの割合は現時点で断定できるものではありません。
 
ただ、いくつかの調査からアセクシャルの割合が少しずつ明らかになってきているのは事実。今回は2つの調査をご紹介します。
 

日本国内のアセクシャルの調査

 
厚生労働省は2019年、同省の事業「性的指向と性自認の人口学-日本における研究基盤の構築」の一環として、大阪市民を対象にセクシャルマイノリティに関するアンケートを実施しました。
 
そもそも、この事業名に出てくる「性的指向」や「性自認」は次の内容を意味し、セクシャルマイノリティの知識を深めるうえで重要な考え方です。
 

  • 性的指向:好きになる性。男性を好きになる場合は、性的指向が男性に向いている
  • 性自認:心の性。体の性は女性で心の性が男性である場合、性自認は男になる

 
このアンケートでは18〜59 歳の1万5,000人を対象とし、そのうち4,285人が回答。誰に対しても性愛感情を抱かない「アセクシャル・無性愛者」と回答したのは、全回答者の0.8%にあたる33人でした(2)
 
なお、「ゲイ・レズビアン」「バイセクシュアル」「アセクシャル・無性愛者」「決めたくない・決めていない」「トランスジェンダー」と回答した人の合計は、回答者の8.2%にあたる352人だったということです。
 

海外のアセクシャルの調査

 
また、米国に拠点を置く性的指向とジェンダーアイデンティティの問題に特化した研究機関「Williams Institute」は2019年、米国のレズビアン、ゲイ、バイセクシャルとそのほかのセクシャルマイノリティの成人を対象にアンケートを実施。
 
その結果、自分はアセクシャルであると自覚している人は、このアンケートに回答したセクシャルマイノリティ1,504人の1.7%にあたる19人でした(3)
 
Williams Instituteによると、レズビアン、ゲイ、バイセクシャルの成人と比較して、アセクシャルの成人には「女性」「性自認や性表現に男性や女性などの枠組みを当てはめようとしないノンバイナリー」「出生時に女性と判定された人」「若い人」が多い傾向にあったとしています。
 
1つ目のアンケートは市民全体を対象とし、2つ目のアンケートはセクシャルマイノリティを対象としたもの。
 
アンケートの対象がそれぞれ異なるため、この2つの結果を比較するのは難しいですが、自分のことをアセクシャルと自覚する方が一定数存在することは事実です。
 
(2)出典:「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」結果速報
(3)出典:​​1.7% of sexual minority adults identify as asexual
 

結婚への考え方

 
ひと口にアセクシャルと言っても、結婚への考え方は多種多様。アセクシャルのなかには結婚に関心がある人もいれば、結婚願望がない人もおり、結婚しなくてもパートナー探しはしたいという考え方もあります。
 
アセクシャルの考え方の多様性は、結婚だけにとどまりません。アセクシャルは性的欲求を抱かないからといって、愛情や友情を感じない、人間に魅力を感じないというわけでもないのです。
 
セクシャルマイノリティかどうかにかかわらず、人間の結婚への考え方は様々。そのため、アセクシャルが結婚に対してそれぞれ異なる考え方を持っているのは、当たり前といえるのではないでしょうか。
 

ノンセクシャルやアロマンティックとの違い

 

 
アセクシャルと混同されやすいセクシャルマイノリティの種類として、「ノンセクシャル」と「アロマンティック」が挙げられます。
 
アセクシャルとの違いを順番に見ていきましょう。
 

アセクシャルとノンセクシャルの違い

 
ノンセクシャル(ノンセクシュアル)は、恋愛感情を抱くものの、性的欲求を抱かないセクシャリティです。つまり、アセクシャルとノンセクシャルの主な違いは、他人に恋愛感情を抱くかどうか。
 
ノンセクシャルは、恋愛感情があるアセクシャルという意味で、ロマンティック・アセクシャルと呼ばれることもあります。

 
ノンセクシャルはアセクシャルと同様に、人それぞれ異なる考え方を持っているもの。どのセクシャリティの人に恋愛感情を抱くか、どんな形の恋愛をするかは多種多様です。
 
ノンセクシャルだからといって、結婚願望がなかったり、周囲の人に愛情や友情を感じなかったりするわけでもありません。
 

アセクシャルとアロマンティックの違い

 
アロマンティックは、性的欲求の有無にかかわらず、他人に対して恋愛感情を抱かないセクシャリティです。
 
世界には、恋愛することや恋愛感情を持つことを何らかの理由で意識的に避けている方もいますが、そのような方はアロマンティックには含まれません。
 
一方でアセクシャルは、恋愛することや恋愛感情の有無にかかわらず、他人に対して性的欲求を抱かないという特徴があります。
 
恋愛感情も性的欲求も抱かない、アロマンティックとアセクシャルの両方の要素を持つ場合は、アロマンティック・アセクシャルと呼ばれることも。日本に限っていえば、アロマンティック・アセクシャルをアセクシャルと定義していることが多いです。
 
ノンセクシャルとアロマンティックのほかに、自分が性的欲求を感じるのかわからない、またはアセクシャルであったり、ときには他人に対して性的欲求を抱いたりする「グレーセクシャル(グレーセクシュアル)」もあります。
 
性的指向や、性自認、恋愛感情の持ち方が人それぞれ異なるのは当たり前のため、そもそも「アセクシャル」「ノンセクシャル」「アロマンティック」などのカテゴリーに自分の存在を当てはめることに否定的な意見があるのも事実。
 
そのため、セクシャリティは自分の存在をカテゴリーに当てはめるためのものではなく、人間の性的指向や性自認、恋愛感情の持ち方にはあらゆる傾向があることを理解するための重要な考え方と捉える必要があるでしょう。
 

自分らしく生きられる社会のために

 
アセクシャルを含むセクシャルマイノリティをサポートするために、どのようなことができるでしょうか。
 
たとえば、アセクシャルは外見で判断がつくわけではないため、性を勝手に判断したり、自分の価値観を押し付けたりしないことが大切です。「誰もが恋愛し、恋愛感情や性的欲求を持つ」という前提自体に疑問を感じることも大切でしょう。
 
先ほどご紹介したように、アセクシャルの結婚観は人によって異なり、パートナーの呼び方も人それぞれ。そのため、相手の感情を理解して言葉遣いに注意する必要もあります。
 
こうした小さな心遣いの積み重ねが、自分らしく生きられる社会の形成につながるのではないでしょうか。
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Yuka Hirose
ベトナムとカンボジアで行った教育関連の活動をきっかけに、国際協力や環境問題に興味を持つ。大学では化学を専攻し、バイオマスプラスチックについて研究。現在はライター・英日翻訳者として活動。
クリップボードにコピーしました。