国内ホームセンター最大手のカインズが2050年カーボンゼロ目標を策定した理由とは?

サスティナブル

気候変動対策として、2050年のカーボンニュートラル達成が、世界そして日本においても重要になっています。
  
カーボンニュートラル達成に向けて、GAFAをはじめとするグローバル企業に続いて、日本の大企業も環境ビジョンの策定から、戦略制定、アクションの設定を行うことが主流になってきています。そこで今回は株式会社カインズが制定した「2050年カーボンゼロ目標」についてお話をお聞きしました。
  
国内ホームセンターでは最大手の同社ですが、実は非上場企業。カーボンニュートラルへの取り組みを積極的に推進することと、法令順守に沿った活動を粛々と行う従来のやり方を続ける両方の選択肢がありましたが、それでも変革の道を選んだと言います。
  
同社CSV推進マネジャー大西健太郎氏へのインタビューを通して同社が定める目標の全容と、その意思決定の裏側にある、想いに迫ります。
  

カインズの掲げる2050年カーボンゼロ目標とは?

 
カインズの掲げる2050年カーボンゼロ目標は、2025年までの中間目標と、2050年達成予定の最終目標に分かれています。
  
2025年までの目標は、まずは自社店舗・オフィス・倉庫など建屋のカーボンゼロを達成すること。店舗への太陽光パネル設置や再生可能エネルギーの外部調達を中心とした取組を行っていきます。
  
また、その先には、2050年までにサプライチェーン全体のみならず、「カインズのあるまち」におけるカーボンゼロの達成も視野に。
 

 

そのためには、自社(Scope1&2)でのカーボンゼロを達成した後に、原材料の調達や輸送などの上流工程(Scope3)、そして製品の使用や廃棄における下流工程(Scope3)をも巻き込んでいき、更には「まち」のカーボンゼロへの貢献も見据えた大掛かりな変革が必要になります。
  
同社によれば、同目標はホームセンター業界でグローバルトップ水準、小売業界でも国内トップ水準の目標とのことです。
  

背景にあるのは、「くみまち」構想

 

 

今回、カインズがカーボンゼロ目標を制定し、大きな変革に取り組むことの背景には、その上段にある「くみまち」構想の存在が挙げられます。
  
「くみまち」構想とは、同社が2021年に発表した、言わばCSV経営をフレームワーク化したもので、「人々が自立し、共に楽しみ、助け合える、“一人ひとりが主役になれる『まち”』」の実現を、様々なステークホルダーとの「共創」で目指すものです。
  
くみまち構想では、15の共創価値領域を制定しました。そのレベル1「暮らしに安心を」を実現するために必要な要素の1つが、「環境」なのです。
  

「お客様との接点であるカインズの店舗における脱炭素化など自社でできる取組みだけでは、そこまで社会的なインパクトはありません。しかし、サプライチェーン全体で見ると、カインズは数千社の企業とお取引をしています。私たちが先陣を切って取組んでいくことで、こうした企業の活動にも変化をもたらし、しいては大きな変革につながる可能性があります。だからこそ、我々が行うことに意味があると考えたのです。」

  
大西氏はそう答えます。
  

ホームセンター最大手の社会的責任

冒頭にもあったように、カインズはホームセンター最大手でありながらも、非上場企業。
  
ESG投資を呼び込むための情報開示責任がない中、環境問題(カーボンニュートラルなど)へのコミットメントを、一企業としてここまで掲げる必要はなかったかも知れません。
  
それでも、大きなビジョンを掲げて、カーボンゼロに取り組むのには、くみまち構想の存在があったと言います。
  

「上場企業ではないので、長期のカーボンゼロ目標を立て、法令順守の枠を超えて取り組むか否かは、私たちに委ねられているところがありました。しかしながら、くみまち構想の実現を考えれば、カーボンニュートラルに積極的に取り組まないという選択肢はありませんでした。」

  
また、機械的なビジョンの設定もしたくなかったと言います。
  

「環境問題やSDGsに企業が取り組むことは、世間的にはマストになっています。ただ、それを機械的に行うだけでは、社内外から共感を得られるものにはならないと考えました。もっと意思を込めるべきだと思ったのです。そのようにして、社会的な責任がある私たち自らが先頭に立って取り組むことで、お取引様に対しても、お客様に対しても1つのメッセージになるのではと考えています。」

  

目指すのは、日本的な共創

  
カインズのカーボンゼロ目標は、サプライチェーン全体を巻き込んだ計画。複雑に絡み合うステークホルダーと共に進めていくのは、至難の技であることが容易に想像できます。
  

「取引先企業様の反応は様々でした。上場企業様は既にSDGsや環境問題に取り組んでいるところが多いので、私たちがやっと同じ目線に立たせて頂いたと言う感覚です。一方で、中小企業様とはこれから順次意識合わせをしていくことが必要だと考えています。」

  
中小企業と大企業の反応は全く違うようで、中には、不安の声もあるとのこと。
  

「1つ耳にしたのは、アップルのようなことはしないよね?と言う声です。」

  
カーボンニュートラルを達成できない企業は強制的に取引を終了すると発表した世界的企業を例に挙げ、カインズの日本企業としての姿勢を教えてくれました。
  

「私たちに必要なのは、日本的な共創だと思います。要は、世の中そういう方向に向かっているのでぜひ一緒にやりませんか、という姿勢を大事にしたいですね。」

  

これからの技術やビジネスモデルの革新が鍵になる

  
カインズが中間目標の年として挙げたのは2025年。その先は、まだ模索中のところが多いと言います。
  

「2050年までの間で、もう一度中間目標年を刻む必要があると考えています。技術革新も急速に進展するでしょうし、これから様々なビジネスモデルも出てくることでしょう。そのような外部環境の動きをとらまえながら、様々なステークホルダーと有機的な繋がりの中で、私たちカインズとしてできることを進めていければと考えています。」

  
と同氏は将来の展望を話してくれました。
  

編集後記
 
今回は、株式会社カインズのカーボンゼロ目標の背景にある想いや、企業としての大事にしていることに迫りましたが、いかがでしたか。
  
筆者としては、くみまち構想が近江商人の8方良しに通ずるものがあると考えながら話を聞いていました。急速に変化が必要な時代だからこそ、昔から大事にしている原点に立ち返るのも、本当に何が重要かを見極める上で欠かせないのでは無いでしょうか。
  
それでは、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
  

               
ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの事業責任者。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることが現在のミッション。
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