ノンバイナリーとは?Xジェンダーやクエスチョニングとの違いも解説

サスティナブル

近年、雑誌やテレビでLGBTやLGBTQIAが取り上げられることが増え、LGBTQIAを象徴するレインボーカラーの旗「レインボーフラッグ」を手にした活動も街中で見られるようになりました。
 
しかし、LGBTQIAだけで性の在り方を語るのが難しいのも事実。なぜなら、LGBTQIAのほかにもノンバイナリーやパンセクシャルアセクシャルなどの無数のセクシャリティが存在するからです。
 
この記事では、レズビアンやゲイなどと比べるとあまり広く認識されていない「ノンバイナリー」を解説します。
 
ノンバイナリーと混同されやすいセクシャリティも解説しますので、セクシャルマイノリティ(日本語:性的少数者)に関心がある方はぜひご覧ください。
 

ノンバイナリーの意味と特徴

 
ノンバイナリー(英語:nonbinary)とは、性自認や性表現に男性や女性などの枠組みを当てはめようとしないセクシャリティのこと。
 
アメリカの非営利団体「National Center for Transgender Equality(トランスジェンダーの平等のための国立センター)」は、ノンバイナリーを「男性と女性の2つのカテゴリーのどちらにも当てはまらないセクシャリティを表す言葉の一つ」と定義しています(1)
 
ノンバイナリーは「ノンバイナリージェンダー(英語:non-binary gender)」と呼ばれることもあり、この呼び方は「ジェンダーバイナリー」に由来します。
 
ジェンダーバイナリーとは、男性と女性の2つのみに性別を分類する考え方。この単語の頭に、否定の意味を持つ「ノン(non)」をつけたのがノンバイナリージェンダーです。
 
ノンバイナリーは性自認と性表現を表すセクシャリティのため、性的指向や身体的性は問いません。
 
(1)出典:Understanding Non-Binary People: How to Be Respectful and Supportive
 

ノンバイナリーを理解するうえで知っておきたい4つの用語

 
ここまでの解説で、「性自認」「性表現」「性的指向」「身体的性」という4つの用語が出てきましたが、意味がいまいちわからないという方もいるかもしれません。
 
4つの用語の意味は次のとおりです。
 

  • 性自認:心の性。体の性は女性で心の性が男性である場合、性自認は男性になる
  • 性表現:服装や髪型、言動などで表現する性
  • 性的指向:好きになる性。性愛・恋愛対象が男性に向かう場合は、性的指向が男性にある
  • 身体的性(生物学的性):身体構造の性。一般的には生まれたときに判定された性を指す

 
ノンバイナリーや、ノンバイナリーとほかのセクシャリティの違いを理解するうえで、これらの用語は重要ですので、整理しておきましょう。
 

ほかのセクシャリティとの違い

 

 
性の在り方は十人十色であり、最近ではオンラインでできるセクシャリティ診断も増えています。ただ、それぞれの違いが正しく認識されていないことがあるのも事実。
 
ノンバイナリーと混同されやすいセクシャリティとして挙げられるのが、「Xジェンダー」「クエスチョニング」「トランスジェンダー」です。
 
ノンバイナリーとこれらの3つのセクシャリティの違いを順番に見ていきましょう。
 

ノンバイナリーとXジェンダーの違い

 
Xジェンダーとは、性自認が男性にも女性にも当てはまらないセクシャリティのこと。もともとは日本で生まれた言葉とされ、外国人にうまく伝わらない場合もあるかもしれません。
 
ノンバイナリーとXジェンダーは同じ意味と捉えられることもありますが、厳密にいえば異なります。なぜなら、Xジェンダーは性自認のみが男女の枠組みにとらわれないのに対し、ノンバイナリーは性自認と性表現の「2つ」が男女の枠組みにとらわれないからです。
 

ノンバイナリーとクエスチョニングの違い

 
クエスチョニングとは、性自認と性的指向が決まっていない、もしくは意図的に決めていないセクシャリティのこと。クエスチョニングとノンバイナリーに共通しているのは、自分を男性にも女性にも当てはめていない点です。
 
ただ、クエスチョニングには「自分のセクシャリティを考えている途中」「いずれかのセクシャリティにあえて当てはめていない」というニュアンスが含まれています。
 
また、クエスチョニングは性的指向によって定義されますが、ノンバイナリーは性的指向によって定義されません。
 

ノンバイナリーとトランスジェンダーの違い

 
トランスジェンダーとは、性自認と身体的性が一致しないセクシャリティのこと。LGBTQIAをもとに考えると、Tにあたるのがトランスジェンダーです。
 
トランスジェンダーは性自認と身体的性が一致しないことや、自分のセクシャリティを強く自認している場合が多いのに対し、ノンバイナリーは自分を男女の枠組みに当てはめません。つまり、自分のセクシャリティに対する考え方がトランスジェンダーとノンバイナリーの違いです。
 
これらのセクシャリティに加え、ノンバイナリーと混同されやすいものに「ジェンダーフルイド」や「クィア」があります。
 
ジェンダーフルイドは、性自認が一定ではなく流動的に変わるセクシャリティのこと。
 
クィアは「風変わりな、不思議な」という意味を持つ英単語です。1990年代までは、主にゲイ(男性同性愛者)を侮辱する言葉としてクィアは使われていましたが、現代ではセクシャルマイノリティの総称として肯定的な意味で使われています。
 
それぞれのセクシャリティに違いがありますが、ファッションやメイクなどで見分けがつくわけではないため、自分の価値観を押し付けないことが大切です。
 

ノンバイナリーを告白した有名人

 

 
セクシャルマイノリティの認識が少しずつ広まるにつれ、自身がセクシャルマイノリティであると告白するセレブや俳優、芸能人、有名人も増えてきました。
 
今回は、ノンバイナリーを告白した3人の有名人をご紹介します。
 

宇多田ヒカル

 
日本の歌手、シンガーソングライター、ミュージシャン、音楽プロデューサーである宇多田ヒカル。
 
宇多田ヒカルは2021年6月、インスタグラムのライブ配信中に「私はノンバイナリーです。ハッピー・プライドマンス!」と語り、プライド月間をファンとともに祝いました(2)
 
毎年6月はプライド月間とされ、LGBTQIAを含むセクシャルマイノリティの権利を啓発するイベントが、世界各地で開催されています。このカミングアウトの2週間前に、宇多田ヒカルは従来の性別の考え方に違和感を覚えることをインスタグラムで綴っていました。
 
(2)出典:Hikaru Utada Announces They Are Non-Binary
 

サム・スミス

 
イギリスのシンガーソングライターで、「Stay With Me.」や「I’m Not The Only One.」などの名曲で知られているサム・スミス。2019年にノンバイナリーであるとカミングアウトし、自身を表す代名詞は「they/them」であると発表しました(3)
 
200年近い歴史を持つアメリカの英語辞書であるメリアム・ウェブスターは、「they」の項目に、「ノンバイナリーの当事者を表す単数形の代名詞・一人称」という意味を追加。
 
2019年には、メリアム・ウェブスターの今年の言葉として「they」が選出され、男女を区別する「He」や「She」以外で個人を表現する単語が浸透しつつあります。
 
(3)出典:Sam Smith Changes Pronouns to ‘They/Them’: ‘I’ve Decided to Embrace Myself for Who I Am
 

アラナ・スミス

 
東京オリンピックのスケートボード女子ストリートにアメリカ代表として出場したアラナ・スミス選手。
 
東京オリンピックではメダル獲得とならなかったものの、2013年に出場したスケートボード世界最高峰の大会「X Games」では、史上最年少の12歳でメダリストとなった実績があります。
 
ノンバイナリーであることを公表しているアラナ・スミス選手は、they/themの文字が書かれたスケートボードを東京オリンピックで使用していました(4)
 
(4)出典:Unapologetically themself: Nonbinary Olympian shares powerful message
 

ノンバイナリーに関する法律の変更

 
ノンバイナリーを含むセクシャルマイノリティがますます重要視されるにつれ、法律も変わってきています。
 
たとえば、米カリフォルニア州では、出生証明書や身分証明書、運転免許証などでノンバイナリーを選択できる法律が2019年に施行されました(5)。2021年6月時点では、アメリカの20州の身分証明書でノンバイナリーを選択できます(6)
 
ノンバイナリーに関する法律の変更は、アメリカだけで進められているわけではありません。
 
世界レベルで見てみると、2021年3月時点で少なくとも8カ国のパスポートにおいて、男性でも女性でもない「第三の性」を選択することが合法化されました(7)
 
具体的にはここ10年程の間に、アルゼンチン、オーストラリア、デンマーク、アイスランド、ネパール、ニュージーランドのパスポートで、男女の枠にとらわれない第三の性を意味する「X」や「O」を選択できるようになっています。
 
(5)出典:California Gender Recognition Act (SB 179)
(6)出典:’X’ Passports in US Mark Shift Toward Respecting Gender Diversity
(7)出典:How the letter X is changing the game for travelers — and what that could mean for the US
 

セクシャルマイノリティを支援する「アライ」の重要性

 

 
自分がノンバイナリーであると打ち明けたくても、なかなか打ち明けられない人がいるのも事実。ノンバイナリーであることを否定されたり、ノンバイナリーは恋愛や結婚をしないなどの偏見を持たれたりすると、その経験が頭から離れなくなってしまう可能性もあるからです。
 
ノンバイナリーが相談しやすい環境をつくるには、「アライ(ally)」の存在が欠かせません。アライとは日本語で「同盟者」を意味し、セクシャルマイノリティの当事者を支援する人のこと。
 
身体的性と性自認が一致する「シスジェンダー」によるセクシャルマイノリティの支援という意味から、「シスジェンダー・アライ」と呼ばれることもあります。
 
ノンバイナリーに関する活動に参加したり、ノンバイナリーと直接関わったりすることだけがアライでいる方法ではありません。
 
活動に参加することは難しくても、周囲の人がノンバイナリーであると打ち明けてくれたら素直に受け入れ、当事者の希望に合わせて名前を呼ぶなど、普段の生活でもアライでいる方法はたくさんあります。
 

さいごに。

 
男女の性差をなくすジェンダーレスの考え方やあらゆる性の在り方が、以前にも増して重要視されているのは事実ですが、最終的にセクシャリティを決めるのは、ほかの誰でもなく自分自身です。
 
いずれかのセクシャリティに自分を当てはめて心が安定する人もいれば、そうでない人もいます。ただ、自分がノンバイナリーであるかどうかにかかわらず、ノンバイナリーを正しく理解することが、誰もが自分らしく生きられる社会への一歩となるのではないでしょうか。
 
そして、この記事がノンバイナリーへの理解を深めるきっかけとなれば幸いです。
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Yuka Hirose
ベトナムとカンボジアで行った教育関連の活動をきっかけに、国際協力や環境問題に興味を持つ。大学では化学を専攻し、バイオマスプラスチックについて研究。現在はライター・英日翻訳者として活動。
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