オーバーツーリズムとは?原因と海外・国内の事例、及び対策を紹介

サスティナブル

観光客が大量に押し寄せてしまうオーバーツーリズムは、観光業界や観光地に住む人々にとって悩ましい問題。
 
海外および日本でもその対策方法が問われており、世界中でたびたび議論されています。今回は、オーバーツーリズムという言葉の意味や問題点、対策方法などをご紹介してまいります。
 

そもそもオーバーツーリズムとは?

 
オーバーツーリズム(Overtourism)とは、「(数値などが)基準を超える」という意味を持つ「Over」と「観光」という意味を持つ「Tourism」を組み合わせた言葉。
 
観光地に過度な観光客が押し寄せることによる問題を指し、日本では「観光公害」と表すこともあります。
 

具体的な問題点と課題は


観光地に過度な観光客が押し寄せることにより問題が生じるオーバーツーリズム。まずはその具体的な問題点と課題を、5つに分けてご紹介します。
 

混雑

 
多くの観光客が集まる場所で問題となるのは、混雑。電車やバスといった交通機関の混雑はもちろん、街中のトイレや飲食店なども混雑し、地域住民の暮らしに負担をかける事例もあります。
 
場合によっては渋滞や電車遅延、施設の入場制限などもおこり、通勤・通学に影響を与えることも。観光客はスーツケースなどのかさばる荷物を持っているため、実際の人数以上に混雑を感じるということもあるでしょう。
 

マナー問題

 
さまざまな文化を持つ国や地域から来た観光客のマナー問題も、深刻な課題です。
 
日本でも、訪日外国人によるポイ捨てされるゴミや深夜の大騒ぎ、立ち入り禁止区域での記念撮影、飲食禁止エリアでの立ち食いなども、大きな問題となっています。
 

文化財・遺跡などの損傷

 
観光客により世界的な文化財、遺跡などに傷がつけられるという事態も多数発生しており、これもオーバーツーリズムの影響のひとつです。
 
その原因は故意であるものとそうでないものと理由は様々ですが、文化財・遺跡自体の価値の下落につながることもあります。
 

違法民泊の増加

 
観光客が増えれば増えるほど広がるのが、違法民泊。通常、日本での民泊は「旅館業法」の許可か、「住宅宿泊事業法」の届出、「国家戦略特区法」の認定のいずれかがなくてはいけません。ですが、違法民泊があるというのも現実。
 
近隣住民とのトラブルや犯罪につながる可能性もあり、危惧されています。日本では2020年に旅館業法違反のおそれがある事案を厚生労働省がとりまとめており、より強固な対策をしようと試みています。
 

景観の悪化

 
美しい街並みや自然が魅力の観光地も、人であふれかえってしまうとその景観が悪化してしまうことが懸念されます。
 
観光客向けの看板の乱立や景観にあわないホテル等の施設の設立なども、オーバーツーリズムの影響といえるでしょう。
 

海外のオーバーツーリズム事例


観光業界にとって、大きな問題となっているオーバーツーリズム。まずは世界の問題点や対策方法などを見ていきましょう。
 

スペインのオーバーツーリズム

 
1992年のオリンピックをきっかけに、世界からの観光客が増えたともいわれているスペインのバルセロナ。観光客向けのホテルや商業施設も多数建てられましたが、オーバーツーリズムによりもともと住んでいた人々の環境は悪化してしまいました。
 
バルセロナ住民による「観光反対デモ」をはじめとする反対運動も多数行われるようになり、事態を重く見た政府は2017年に「2020年に向けた観光都市計画」を発表。
 
2016年より施行されていた新たな商業施設等の開設を禁止するほか、観光客向けの新規ホテルの建設を禁止するなどの対策をしています。
 

イタリアのオーバーツーリズム

 
イタリアでも問題となっていたオーバーツーリズム。特に映画の舞台となったベネチアなどの街では、その映画のシーンを再現したがるような観光客も世界中から多数訪れました。
 
そこで政府は、警官による見回りや声かけなどを中心に、観光客のマナー改善を推し進めることに。禁止行為を分かりやすく提示するほか、場合によっては罰金を徴収することもあり、厳しく取り締まっています。
 

オランダのオーバーツーリズム

 
旅行者や旅行業界が優先されているといわれていたオランダでは、「レジデンス・ファースト」として住民を優先する方針を決定。
 
新規ホテルの建設を規制するほか、観光税の導入といった取り組みが行われています。
 

日本におけるオーバーツーリズム事例


海外でも問題になっているオーバーツーリズムは、日本の観光地でも多くの問題を生んでいます。続いては、日本国内でのオーバーツーリズム問題とその対策をご紹介します。
 

京都におけるオーバーツーリズム

 
古都・京都ではオーバーツーリズムにより街の景観が破壊され、地域住民の暮らしを疲弊させているという問題が起きています。
 
格式を何よりも大切にする「祇園」からは街の威厳が保たれなくなるという意見が出たこともあり、京都観光協会では「オーバーツーリズム対策事業」を開始。混雑を緩和し、地域住民の暮らしを守るため、観光の分散やマナーの向上などに取り組んでいます。
 

富士山におけるオーバーツーリズム

 
日本を代表する山である富士山も、オーバーツーリズムの問題を抱えています。
 
「富士山保全協力金」を導入するなど対策をしていますが、実際に山にはゴミが捨てられたり自然環境が破壊されたりといった問題が起きており対策が急がれています。
 

沖縄におけるオーバーツーリズム

 
沖縄では、オーバーツーリズムによる宿泊施設の不足が大きな問題となっています。
 
不動産業は宿泊地を確保するため、住居用の土地や建物を宿泊施設に転換。それにより賃料の値上げや住居の不足が起こり、地域住民の暮らしを圧迫する結果となっています。
 

問題の解消方法とは


多くの観光客が押し寄せることにより地域住民や土地が犠牲となってしまう、オーバーツーリズム。観光客と地域住民、どちらも満足できるような観光地づくりのために、どういった解消方法があるのでしょうか。
 

時間や場所の分散

 
オーバーツーリズムの大きな原因の1つとなっているのが、ひとつの観光地に過度に観光客が集中してしまうこと。そのため観光場所や時間帯、時期の分散がオーバーツーリズムには有効であると言われています。
 
観光協会や自治体では、有名な観光地以外の近隣スポットをおすすめとして紹介するほか、オフシーズンの魅力を発信するなど、観光分散に向けて様々な取り組みを行っています。
 
そして、2020年から全世界に広がった新型コロナウイルスの影響により、この分散スタイルの観光は感染拡大防止になるということもあり奨励されることに。まだ2020年からはじまったばかりの観光のスタイルではありますが、2021年現在も少しずつ浸透しつつあります。
 

観光客の数を抑制

 
海外では、観光時に事前予約が必要な地域も多数あります。
 
ある一定の数を超えたときには入場制限を行うほか、入場料を取るなどして、観光客の数を絞りオーバーツーリズムを避けようという動きを行うところもあります。
 

観光マナーの啓蒙

 
オーバーツーリズムで大きな問題となるのが、観光客のマナー。特に海外からの観光客は文化が違うこともあり、マナーを知らないという方も多々いるのが現状です。
 
そのため、海外からの観光客にも分かりやすいマナーの提示も重要なポイント。具体的には観光庁や自治体による看板やパンフレットでの提示や呼びかけとなるでしょう。海外ではマナー違反をした場合には罰金制度を取っているところもあり、一定の効果も上げています。
 

サスティナブルツーリズムという考え方

 
今、観光地や観光客の間で注目されているのが「サステイナブルツーリズム」という考え方。
 
過度な商業化を避けつつ観光地に住む人々の暮らしや雇用を大切にする。その地域の文化や自然の本来の形を体験する。そういった旅が、「持続可能な観光」ともいわれる「サステイナブルツーリズム」の概念です。
 
「サスティナブルツーリズム国際認証」といわれる認証もあり、こういった基準を満たした旅がスタンダードになれば、オーバーツーリズムの問題も解消できるかもしれません。2021年2月には日本にて「観光SDGs支援センター」も設立されています。
 

最後に。楽しい旅のためにできること。

 
幸せな余暇時間を過ごし、素敵な体験ができる旅行や観光。2020年から広がった新型コロナウィルスが落ち着いたら行きたい、と考えている方も多いかもしれません。
 
ですが、地元住民や環境のことを考えないと観光客自身が「公害の原因」となってしまう可能性もはらんでいるのです。
 
観光客はもちろん、地元の方たちも、世界のみんなが楽しい時間を共有できるように。旅行や観光のあり方について、改めて考えていきたいと思います。
 
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

               
ライター:Ethical Choice編集部
Ethical Choice編集部です。エシカルな生活を送る知恵、サスティナビリティに関する取り組み、環境問題に対するソリューションを発信いたします。
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