パンセクシュアルの意味と特徴とは?バイセクシュアルとの違いもご説明

サステナブル

パンセクシュアリティとは、すべての人に恋愛感情を抱き、性的指向を持つ性の在り方。

ここ数年、LGBTQという言葉が社会に広がっていくにつれ、性のマイノリティに当てはまる人々がいることを認識する人が増えています。

性は、それぞれの人によって異なるもの。今回は、バイセクシュアルと混合されやすいパンセクシュアルについて、社会学を専攻する筆者が解説いたします。

当記事が、すべての人にとって、自分の性に正直に、そして自分の愛する人と人生を共にできるような、そんな記事となれば幸いです。

パンセクシュアル(Pansexual)の意味と特徴とは?

パンセクシュアル(英語:pansexual、パンセクシャル)とは、日本語で『全性愛者』を意味し、男性・女性の分類に限らず、すべての性の人を恋愛対象とするセクシュアリティのこと。

「好きになった人が好き」という考え方であり、パンセクシュアル にとって、人を好きになる条件に性別は関係ありません。LGBTQやXジェンダーなどその他のジェンダーアイデンティティの方も、恋愛対象として含みます。

音楽の趣味に例えると、J-popが好きだからとJ-popだけ聞く人もいれば、J-pop、洋楽、K-popなど幅広く多様なジャンルの音楽を楽しむ人がいるのと同様に、単一のジャンルにこだわらずに、どの性の人にも興味を持つことをパンセクシュアルと言います。

パンセクシャル・プライド・フラッグ

パンセクシャルを象徴する旗

LGBTのコミュニティをレインボーの旗でサポートするように、パンセクシュアルを象徴するフラッグもあります。

パンセクシャル・プライド・フラッグは、ピンク、イエロー、ブルーの3本の横じまが入る旗です。定義によると、ピンクは女性と識別された人を、青は男性と識別された人を、黄色はノンバイナリー・アトラクションを表しています。

似てる概念『パンロマンティック』とは?

パンロマンティックとは、すべての性を持つ人に恋愛的に惹かれる性の在り方を指します。

パンセクシュアルが性的指向を意味するのに対し、パンロマンティックは恋愛感情に限定される部分が違いです。

また、パンロマティック以外にも、パンセクシュアルと共に語られるものがあるので、次にパンセクシュアルと混合されがちな概念をご紹介します。

バイセクシュアルやポリセクシュアルとの違い

パンセクシャルとバイセクシャル、ポリセクシャルの違い

by Teddy Österblom

パンセクシュアルは、人を好きになる条件に性別が入らないため、相手の性別自体を考えないことに比べ、バイセクシュアルは『男性と女性の両方が好き』と性を特定している考えです。

また、ポリセクシュアルは、男性や女性、そしてノンバイナリーの人も恋愛対象など、複数の性別を踏まえて恋愛を考えているので、パンセクシュアルとは別に区分されます。

バイセクシュアルとは?

バイセクシュアルは、男性と女性の両方に恋愛感情を抱くジェンダーのこと。パンセクシュアルとバイセクシュアルは、混合されがちなジェンダーアイデンティティです。

男性女性のどちらにも性愛感情を抱く性の在り方がバイセクシュアルで、自身の性別は関係しません。

ポリセクシュアルとは?

ポリセクシュアルは、パンセクシュアルに含まれがちなジェンダーアイデンティティですが、複数の性を好きになる点が、性を認識して恋愛対象を決めているためパンセクシュアルとは区別できます。

複数の性を好きになるセクシュアリティがポリセクシュアルで、多性愛や複数性愛とも呼ばれているものです。

では、どのような特徴をつかめば、パンセクシュアルに当てはまると判断できるのでしょうか。

パンセクシュアルを知ろう

ぱんせくしゃるを診断するテスト

by Hannah Olinger

パンセクシュアルだと診断することや、自分をパンセクシュアルだと完全に納得させるようなテストはありません。なぜなら、自分のセクシュアリティは自分次第で決定できるものだからです。

しかし、パンセクシュアルに当てはまるとされる特徴を探るシンプルなテストはありますので、パンセクシュアルの特徴をご紹介しながら、テストをご説明します。

パンセクシュアルを診断するテスト(1)

 

  • ジェンダーに関係なく、『人』に惹かれる
  • バイセクシュアルのような他のジェンダーはしっくりこない
  • パンセクシュアルというジェンダー定義が腑に落ちる

パンセクシュアルが持つ特徴は、以上のようなものです。このような特徴が考えられる場合、パンセクシュアルに当てはまるかもしれません。

(1)What Does Pansexual Mean? How To Know If You’re Pan

パンセクシュアルを告白したセレブたち

パンセクシャルを公表したセレブたち

by Shingi Rice

パンセクシュアルは、新しい概念のように感じられるかもしれませんが、すでにセレブたちのなかにはパンセクシュアルをカミングアウトした人も。

今回は、パンセクシュアル告白した3人のセレブたちを、順にご紹介いたします。

マイリー・サイラス

ディズニーチャンネルの連続ドラマ『ハンナ・モンタナ』で一躍ティーンの憧れとなったマイリー。2015年のインタビューでは、「私はパンセクシャルだ(2)」と語っています。

また、人は人に恋をするもの。ジェンダーとか見た目に関わらず、その人のスピリチュアルな部分を見て恋をする。(3)」と発言しています。

(2)Miley Cyrus Opens Up About Sobriety, Liam Hemsworth, and Being ‘Pansexual’
(3)Miley Cyrus Interview On Sexulaity, Love And Pansexuality

デミ・ロヴァート

マイリーと同じように、ディズニーチャンネルの連続ドラマ出身の歌手デミロヴァート。自身の性について、一定しない、とても流動的なものだと語っています(4)

男性との婚約を発表しつつも、2か月後に破棄するなど、自身の性的指向を認識したデミは、女性とデートで、こっちのほうがしっくりくると公言しています。

(4)Demi Lovato Comes Out As Pansexual | Billboard

ニコ・トルトレッラ

生まれつきの性は男性のニコ。彼自身は、男性でもなく、女性でもないノンバイナリーであると公言しています(5)

また、パンセクシュアルが流動的な概念だと述べ、腑に落ちるとの発言も。パンセクシュアルだと言って、バイセクシュアルを否定するのではなく、バイセクシュアルと判断されても構わないと語っています。

(5)15 Celebrities You Didn’t Know Identify As Pansexual

知っておきたいSOGIとは?

パンセクシュアルという人々に加え、セクシュアリティを語る上でSOGI(性的指向・性自認)は知っておきたい概念ですので、ご説明いたします。

性のマイノリティを指すLGBTQは聞いたことがある方が多いと思います。しかし、SOGIとは『自分はどんな性か』や、『どんな人を好きになるか』などを表すので、マイノリティだけでなくすべての人に関わること。

性的指向と性自認をご説明すると、以下のようになります。

  • 性的指向(Sexual Orientation):誰が好きか?という考え。女性が好きな場合は、性的指向が女性に向いているとなる。
  • 性自認(Gender Identification):自らの性を自分自身がどのように認識しているか。身体的には男でも、自分自身を女性だと思う場合、性自認は女になる。

このように、SOGIは自分の性や性的指向を定義する際の概念で、すべての人に当てはまるものです。

いくつかの行政や、日本の働く人や環境を支える日本労働組合総連合会も、マイノリティに当てはまるLGBTQだけでなく、すべての人に関わるSOGIという概念の普及に力を入れています。

このSOGIという考え方のなかには、さまざまな性のアイデンティティや性的指向が含まれているのです。

すべての性はグラデーション。多様な性をご紹介

すべての性はグラデーション

by Daniel James

今回は、パンセクシュアルという性の在り方をご紹介しましたが、その他にも多様な性が存在し、現代社会ではそれらの性がだんだんと広がってきています。

『すべての性はグラデーション』という言葉があるように、性は一般的に知られているものだけでなく、人それぞれによって変わるのです。

多くの性が存在する現代において、パンセクシュアル以外にどのような性的指向があるのか、15のセクシュアリティをこちらでご紹介します。

    1. ヘテロセクシュアル:異性愛。異性に対して性愛感情を抱くセクシュアリティ。
    2. ホモセクシュアル:同性愛。同性に対して性愛感情を抱くセクシュアリティ。
    3. バイセクシュアル:両性愛。異性にも、同性にも性愛感情を抱くセクシュアリティ。
    4. ポリセクシュアル:複数愛。異性や同性、そしてノンバイナリーの人など、複数の

性に性愛感情を抱くセクシュアリティ。

  1. オムニセクシャアル:全性愛。すべての性が性愛対象だが、性愛感情を抱く基準として性があるセクシュアリティ。
  2. パンセクシュアル:全性愛。すべての性が性愛対象で、性愛感情を抱く基準に性は関係ないセクシュアリティ。
  3. アセクシュアル:無性愛。他者に対して、恋愛感情や性的欲求、またはその両方を抱かないセクシュアリティ。
  4. デミセクシャル:半性愛。基本は他者に対して恋愛感情や性的欲求を抱かないが、強い絆を感じた一部の人だけにはそれらを抱くことがあるセクシュアリティ。
  5. サピオセクシュアル:知性愛。相手の知性に性的興奮を抱くセクシュアリティ。
  6. グレーセクシュアル:流動的な性的指向。人生で1度か2度、相手に性的欲求や恋愛感情を抱くセクシュアリティ。
  7. ジニセクシュアル:女性愛(自分の性自認によらない)。自身の性によらず、女性へ性愛感情を抱くセクシュアリティ。
  8. アンドロセクシュアル:男性愛(自分の性自認によらない)。自身の性によらず、男性へ性愛感情を抱くセクシュアリティ。
  9. ポモセクシュアル:そもそも、セクシュアリティの存在を考えないセクシュアリティ。
  10. スコリオセクシュアル:バイナリージェンダーの人に性的指向があるセクシュアリティ。
  11. アウトセクシュアル:自身に性的指向があるセクシュアリティ。

これらのように、ゲイやレズビアンだけでなく、それぞれの個性に合わせるように数多くのセクシュアリティを定義する言葉が登場しています。

セクシャルマイノリティと世の中の動き

国際系学部に通う筆者は、マイノリティな性をオープンにすることが周囲では受け入れられているように感じます。

おそらく、世の中の動きが男か女か、の二極化した考えではなく、自分のなかにある本来の気持ちを素直にのべ、それを周囲が受け入れるようになっていきているからなのではないでしょうか。

世の中の動きを確認し、性のマイノリティがどう受け入れられているのか、見ていきましょう。

世界に広がるレインボーパレード

レインボーパレードの写真

by Tristan B

パンセクシュアルに当てはまる人を含め、性のマイノリティである人々やそれをサポートするアライによっておこなわれるレインボーパレード。

コロナの世界的大流行の前年、アメリカ・NYでおこなわれるレインボーパレードは熱い盛り上がりを見せていました。また、ヨーロッパや台湾、そして日本にまでパレードは広がってきています。

レインボーパレードは、ネガティブな感情がベースにあるのではなく、年齢や性別、そして国籍を問わず観衆は生き生きとした顔をしているそう。誰もが「Happy Pride!」とハイタッチをしあう場面もあるのだとか。

ニューヨークでは一大イベントになっているほどのレインボーパレードが、世界に広がることにより、性のマイノリティへの認知度を向上に繋がると考えられます。

東京五輪ではLGBTQアスリートの出場が史上最多に

また、2021年夏に開催された東京オリンピックでは、LGBTQアスリートの数が、オリンピック史上最多となりました。

性のマイノリティに属するアスリートの数は全部で163人。この数は、2016年のリオオリンピックと比べ2倍近くに増加しています。(6)

国際的なステージで自分の性に正直になれたり、またそれを受け入れる体制が段々と整ってきていたりと、そのような傾向が東京オリンピックでは見られました。

このような変化は、将来オリンピック出場を目指すすべての人にとって、希望となる前進であるでしょう。

ハンガリーでは反LGBTQ法案が可決

一方で、性のマイノリティへ保守的である地域が残るのも事実。2021年、ハンガリーで反LGBTQ法案が可決したのです。

政府は、反LGBTQ法は18歳未満の児童に対して、教育現場で同性愛や性転換などのを話題にすることや、メディアがそれらの情報を発信することを規制するものとし、小児愛から守るための法だと主張。(7)

性のマイノリティへの差別だという声も世界中で上がっており、これからの動向に注目が集まっています。

(6)東京五輪ではLGBTQアスリートの出場が史上最多に

(7)ハンガリーで反LGBTQ法案が可決。「性的マイノリティーへの差別だ!」と世界中から批判殺到

性のマイノリティを支援する『LGBTQアライ』

LGBTフレンドリー

by Jana Sabeth

LGBTQアライ(英語:Ally)とは、自身は多数派のジェンダーを認識しているが、少数派の人を支援する人たちのこと。英語のAllyは同盟という意味を持ちます。

最近、LGBTQを表すレインボーカラーの旗を目にする機会が増えたのではないでしょうか?レインボーカラーの旗は、当事者だけでなく、支援する人たちもその意思を表示するために使えるもの。

LGBTQアライはの形容詞はLGBTQフレンドリーで、LGBTQフレンドリーな人やLGBTQフレンドリーな企業と使います。

このように、自分が当事者ではないから関係はないのではなく、LGBTQアライだと表明することで支援の意思を示せるのです。

今回ご紹介したパンセクシュアルなど、少数派とされる性の在り方を持つ人を支援したい方や、寄り添いたいと思う方は、LGBTQアライだと表明してみてはいかがでしょうか。

さいごに。

当記事では、すべての人に性愛感情を抱く『パンセクシュアル』という人の在り方についてご紹介しました。

現在、LGBTQという概念が社会に広がるなど、性のマイノリティの知名度が上がってきています。性のあり方は人それぞれ異なるもの。

より多くの人にとって、自身のアイデンティティが誇れるものとなり、それぞれが愛する人と心豊かに暮らせる社会を目指せるような、そんな記事となっていれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Ethical Choice編集部
Ethical Choice編集部です。エシカルな生活を送る知恵、サスティナビリティに関する取り組み、環境問題に対するソリューションを発信いたします。

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