ソーシャルビジネスとは?世界の課題を解決する事業例をご紹介

サスティナブル

ソーシャルビジネスとは、利益を上げながら、社会課題の解決に取り組む事業。
 
つまり、企業や事業自体が収益化しながら、ビジネスとして社会課題を解決することを目指すことです。
 
グローバル化が進むにつれ、世界に存在する社会問題や環境問題が顕在化し、それらの課題を国境を超えて解決する取り組みとして注目を集めるソーシャルビジネス。
 
当記事では、ソーシャルビジネスの概要とボランティアとの違い、そしてソーシャルビジネスの事例まで、幅広くご紹介いたします。
 

ソーシャルビジネスとは?

 
ソーシャルビジネス(英語:Social Business)とは、貧困や環境問題など、社会の問題を解決するためにおこなう事業という意味です。特徴は、外部資金に依存せず、自らの収益で事業を持続可能にし、社会へ貢献する点。
 
ソーシャルビジネスは、絶対的貧困に在る人々や差別などの問題を抱える人、そして環境問題などの社会課題を解決するための事業です。
 
ボランティアなどの慈善事業とは異なり、ソーシャルビジネスは自らの利益で、経済的に自立する特徴があります。そのため、資金調達の必要がなく、ソーシャルビジネスはその利益を持続可能な社会のために、再投資することが可能です。
 

ソーシャルビジネス7つの原則

 
バングラデシュ出身のムハマド・ユヌス博士は、ソーシャルビジネスという言葉を広げた第一人者です。ユヌス博士は、ソーシャルビジネスの7つの原則(1)を設けています。
 

  1. 事業の目的は、利益の最大化ではなく、貧困や、人々や社会を脅かす1つ以上の問題(教育、健康、技術アクセス、環境など)の克服であること
  2. 経済的に持続可能であること
  3. 投資家は、投資額のみを回収し、投資金以上の配当を受け取らないこと
  4. 投資額が回収されても、会社の利益は会社に残り、拡大と改善に使われること
  5. ジェンダーに配慮し、環境にも配慮すること
  6. 雇用される労働者にとってより良い労働条件があること
  7. 楽しみながらおこなうこと

これらの原則は存在しますが、国によって、ソーシャルビジネスの定義は異なります。
 
そのため、断言できるソーシャルビジネスの定義はないのが現状ですが、概ね『社会問題を事業のコアに置き、ビジネスでの解決を目指す事業』と説明できます。
 
(1)出典:Seven Principles of Social Business
 

日本国内ではどのように定義する?

日本ではどのように定義されるか

by Dylan Gillis

日本国内では、ソーシャルビジネスは経済産業省によって、以下のように定義されています。
 
『ソーシャルビジネスは、社会的課題を解決するために、ビジネスの手法を用いて取り組むもの。そのためには新しいビジネス手法を考案し、適用していくことが必要である。』(2)
 
また、経済産業省は、以下3つの要件を満たすものを、ソーシャルビジネスとします。(2)
 

  1. 社会性:解決が必要な社会的課題への取り組みを、事業の核となるミッションとすること。
  2. 事業性:①のミッションをビジネスとし、継続的に事業活動をおこなうこと。
  3. 革新性:ソーシャルビジネスによって、新しい商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その取り組みが社会に広がることで、新たな社会的価値を創出すること。

では、上記のように定義されるソーシャルビジネスは、日本国内では認知されているのでしょうか?
 
(2)出典:ソーシャルビジネス研究会報告書
 

国内では、若い世代ほど関心が高い

日本において、ソーシャルビジネスは広がってきてはいるものの、いまだ認知度は低い状況。しかし、若い世代ほどソーシャルビジネスへの関心が高いことも、調査によって明らかになっています。
 
経済産業省の『ソーシャルビジネス研究会 報告書』によると、現状、国内におけるソーシャルビジネスの認知度は低いと言えます。
 
ソーシャルビジネスの事業や事業者が、具体的に思い浮かぶ者は全体の16.4%。また、ソーシャルビジネスの商品やサービスの利用経験を見ると、『ほとんど使ってことがない』が 31%と最も多い結果に。(2)
 
しかし、世代別で見ると、若い世代はソーシャルビジネス・コミュニティビジネスへの関心が強いことがわかっています。(3)
 
そのため、若い世代を中心に、ソーシャルビジネスの起業家を目指す人も増加している傾向です。
 
(3)出典:JFCプレスリリース
 

NPOではなく、ソーシャルビジネスが必要な理由

ソーシャルビジネスが必要な理由

by Campaign Creators

ソーシャルビジネスは、事業自体を収益化することで、必要な部分に再投資をするなどお金が回る仕組みとなり、継続的に問題解決へアプローチできることから必要です。
 
また、目まぐるしく変化する社会のなかで、社会問題が多様に、そして複雑になっていることもあげられます。SDGs(持続可能な開発目標)が国連から発表されたことや、SNSで世界がつながっていることも、社会問題へ関心を高める一因に。
 
このように、誰ひとり取り残さず発展を目指す現代において、取り残されている人々が広く発信されるようになりました。
 
そして、行政やNPOの力だけでは解決しきれない問題が増加したことから、社会課題をビジネスの目的とし、解決を目指すソーシャルビジネスが注目され、必要とされているのです。
 
ここから、ソーシャルビジネスの特徴をより明確にするために、一般企業、NPO、そしてボランティアと、ソーシャルビジネスの違いをご説明します。
 

ボランティアとソーシャルビジネスのちがい

ボランティアは、金銭的な報酬を求めない社会貢献。金銭的、そして心理的に余裕がある主体が、慈善活動としておこなうことが多いです。
 
社会貢献という部分は共通していますが、ソーシャルビジネスはビジネスを通し収益化しながら社会課題を解決するという特徴を持つため、報酬を受けないボランティアとは区別できます。
 
ボランティアの場合、金銭的なバックアップがなくなると活動が続かないことが多いですが、ソーシャルビジネスなら自らを持続可能にしながら社会貢献を続けることが可能です。
 

NPOとソーシャルビジネスのちがい

NPOとソーシャルビジネスは、混合されやすいものです。また、NPOはソーシャルビジネスだという意見もあります。
 
しかし、NPOは外部資金に頼り活動を続けている場合もあるため、自ら収益化し、その利益を課題解決の資金へと回すソーシャルビジネスとは区別できるもの。
 
NPOは、外部のステークホルダーと折り合いを合わせるため、自分の意思とは別の決断をする場合があります。その点、ソーシャルビジネスなら、資金は自分たちで賄っているため、自分たちの意思が尊重されやすいのです。
 
また、自らが利益を上げることで、ソーシャルビジネスの場合ある程度の給与は担保されます。これが、働く側の人間らしく人生を送るレベルを守ることにつながり、心の余裕を生み出し、事業自体を持続可能するのです。
 

一般企業とソーシャルビジネスのちがい

一般企業でも、社会へ貢献する取り組みをCSR活動としておこなう会社は存在しますよね。しかし、ソーシャルビジネスは社会課題解決を目指し、その目標を核として利益を回していくため、利益の余剰の分で社会貢献をおこなう一般企業とは一線を画すものです。
 
ここでの社会課題とは、貧困や難民問題など、通常官業でカバーされるべきだが、上手く解決の施策が施されていないものを指します。
 
社会貢献性と、一般企業と同じようなビジネスの力があるからこそ、ソーシャルビジネスは痒い所に手が届くような社会課題解決の取り組みを可能にし、事業自体も自ら継続させることができるのです。
 
このように、一般企業、NPO、そしてボランティアなどの、それぞれに共通する部分を持ち合わせながら、唯一無二の特徴も持つのがソーシャルビジネスです。
 

世界のソーシャルビジネス5つの事例

世界にはどのようなソーシャルビジネスが存在するのでしょうか?社会課題の解決を軸とし、事業を展開しするソーシャルビジネスの例をご紹介します。
 

グラミン銀行

ユヌスグラミン銀行

出典:Grameen bank公式サイト

  • 地域:バングラデシュ
  • 特徴:マイクロファイナンスで生活困窮者に小規模な融資を可能に。自立した起業を促す

ソーシャルビジネスの先駆者である、ユヌス博士はバングラデシュにてマイクロファイナンスを中心としたユヌスグラミン銀行を起業。
 
土地などの担保を持たない貧困層に融資を貸し出す事業。独自のシステムで、98%と高い返済率を実現し、2006年にノーベル平和賞を受賞しました。
 
最貧困層は、1日1.90ドル以下で暮らす人々のこと。(4)バングラデシュでは女性の割合が多く、資産がないことから銀行から融資を受けることは大変困難でした。
 
この状況を改善すべく、グラミン銀行は開設され、30年以上に渡って事業を展開しています。
 
(4)出典:貧困をなくそう | 国連広報センター
 

Thank you.

thankyou.(サンキュー)のハンドソープ

  • 地域:オーストラリア
  • 特徴:消費が世界を救う。環境や社会に配慮した商品と、商品の購入が社会貢献につながるブランド

ボディ・スキンケア商品を主に扱うThank you.は、自社の商品にオーガニック、クルエルティーフリー、ヴィーガンフレンドリー、そしてパームオイルフリーという環境に優しい特徴をもつだけでなく、消費が寄付につながるユニークなシステムを提供しています。
 
大量生産・大量消費の消費主義に終止符を打ち、環境と社会、そして人を守ることを目指すブランド。商品にはトラッキングナンバーが記載しており、その番号を公式サイトに入力すると、自分が購入した商品がどのような社会貢献につながっているのか確認できます。
 
Thank you.は、貧困問題から派生するあらゆる社会課題に立ち向かう、ソーシャルビジネスです。
 

Zilingo

  • 地域:東南アジア
  • 特徴:小規模な製造業者と消費者をマッチングするB2Cプラットフォーム。製造者側の利益と働く環境を改善

Zilingoは、インド出身の女性によって起業され、瞬く間に多くの投資を集めたソーシャルビジネスのユニコーン企業。
 
製造側と消費者を直接繋ぐB2Cのプラットフォームだけでなく、BtoBの事業者同士の連絡も可能にすることで、製造業者を守るサービスです。
 
CEOのアンキティ・ボーズは、ファッション業界の歪みに着目し、製造業者は生産への十分な対価を支払われず、労働者も不十分な賃金、福利厚生、労働環境の下にいる状況を改善するために起業しました。
 
製造業者側の安心安全と、消費者も適切な価格で商品を購入できる仕組みをつくり、業界を公平な場所にしようと奮闘するソーシャルビジネスです。
 

M-pesa

ケニアを救うエムペサ

  • 地域:ケニア(アフリカ)
  • 特徴:銀行口座を持たない人でも、携帯ひとつで送金できるモバイル送金サービス

エムペサは、銀行口座が普及していないケニアにて、人々が簡単に送金できるように開発されたサービス。
 
都市部へ出稼ぎする人のなかで、銀行口座を持たない人は、直接お金を届けに地方へ帰るか、プリペイドカード番号にて送金するなど、回りくどい方法での送金をしなければいけませんでした。
 
そんななか、M-pesaはケニアの携帯電話普及率100%に目を付け、モバイル送金サービスを開始。今やケニアのGDPの約5割を超える金額がM-pesaにて取り引きされているとか。
 
地域格差と貧富の格差を改善しようと開発されたソーシャルビジネスです。
 

MADTRAVEL

  • 地域:フィリピン
  • 特徴:サスティナブルツーリズム。先住民を積極的に雇用することで、不平等をなくす

MADTRAVELのテーマは、『旅を通して不平等をなくすこと』。同社は、サスティナブルツーリズムのプラットフォームです。
 
彼らは、フィリピンの先住民へ雇用を創出すること、そして先住民ならではの文化を発信することを目的に、ツアーを開催しています。また、ツアーに植林プログラムを導入し、環境課題の発信イベントも開催。
 
ツアー参加者には、先住民の文化と環境について新たな発見を提供し、先住民には雇用機会と彼らの文化系族機会を与える取り組みです。
 

日本のソーシャルなビジネス3つの例

ソーシャルビジネスは、海外だけでなく、国内にもいくつか存在します。
 
今回は、注目を集め日本のソーシャルビジネス業界の舵取りとなるであろう企業を一覧で集めました。
 

ユーグレナ

ユーグレナのソーシャルビジネス

  • 特徴:ミドリムシを活用し、人と地球のサスティナブルな発展を目指す。バングラデシュの子どもたちの健康を守るため、支援活動をおこなう

ユーグレナは、ミドリムシに着目し、食料難の未来と地球環境を救うことを目指す企業。同時に、『ユーグレナGENKIプログラム』を通し、バングラデシュの子どもたちに栄養豊富なユーグレナクッキーを届けています。
 
人口増加と気候変動に伴い、タンパク質不足が懸念される将来。ユーグレナは、ミドリムシが食の未来を救う可能性に注目し、食料の開発や、燃料としての活用まで、幅広く研究をおこなっています。
 
創設者がバングラデシュにて子どもたちの健康問題を目の当たりにし、ユーグレナの起業へと至ったことから、バングラデシュの子どもたちへ栄養満点の食材を届け続けているソーシャルビジネスの例です。
 

ボーダレスジャパン

ビジレザの工場メンバーと原口さん

  • 特徴:ソーシャルビジネス起業家のプラットフォーム。世界各国のさまざまな社会課題に対応

ボーダレスジャパンは、日本最大級のソーシャルビジネス起業家の集合体です。独自の仕組みで、ソーシャルビジネスが持続可能で社会に好影響を与えられるものとしています。
 
どのような事業があるかというと、バングラデシュにて雇用機会を創出する『ビジネスレザーファクトリー』や、ハーブ栽培でミャンマーの小規模農家を支え、妊婦の方々でも安心して飲めるハーブティーを生産する『AMOMA natural care』などがあります。
 
ソーシャルビジネスでの起業を志す者が集まる、日本でも唯一無二のソーシャルビジネスプラットフォームです。
 

マイファーム

自産自消のマイファーム

出典:マイファーム公式サイト

  • 特徴:「自産自消」が当たり前の社会を目指す。第一次産業従事者の高齢化を改善

マイファームは、耕作放棄地を有効活用し、自分の農地『マイファーム』を持ち農業を楽しむことを促すソーシャルビジネス。
 
サービスとしては、誰でもオーガニック野菜栽培が体験できる『体験農園マイファーム』。そして、使用されていない耕作放棄地と野菜作りに挑戦したい人のマッチングサービス『ハタムスビ』などがあります。
 
農業を身近にすることで、農業に関わる人々を増やし、日本の農業の未来を救うビジネス。『自産自消』という考えに触れることで、自然との距離が近くなること間違いなしです。
 

私たちにできること

ソーシャルビジネスのために働く若者

by Anna Earl

ここまで、海外と国内のソーシャルビジネス事業例をご紹介しましたが、私たちには一体なにができるのでしょうか?
 
ソーシャルビジネスに興味を持った方におすすめの、私たちができるアクションをご紹介します。
 

ソーシャルビジネスを学ぶ

大学や教育プログラムにて、ソーシャルビジネスを学べる環境が整いつつあります。教育機関だけでなく、団体でもソーシャルビジネスの教育を提供している場合がありますので、ぜひ調べてみてください。
 

ソーシャルビジネスコンテストに参加する

ある程度ソーシャルビジネスを学んだら、ソーシャルビジネスのコンテストに参加してみてはいかがでしょうか?いくつかの種類がありますので、熱い思いを持つ仲間と挑戦してみることをおすすめいたします。
 

ソーシャルビジネスの企業を支援する

ソーシャルビジネス企業から、積極的に消費することも私たちにできること。商品を購入する際に、商品の背景やそのブランドがもつ思いなどを確認してみてくださいね。
 

ソーシャルビジネスを広める

SNSで発信してみましょう。日本ではまだソーシャルビジネスの認知度が低いため、1人1人の発信が認知度を上げ、ソーシャルビジネスを盛り上げることに繋がります!
 
ひとつひとつ、できることから、始めていただけると幸いです。
 

さいごに。

 
今回は、社会課題解決を事業のコアに置く『ソーシャルビジネス』をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
 
当記事が、ソーシャルビジネスへの解像度を上げるもの、またはソーシャルビジネスとの出会いになっていれば嬉しいです。
 
昨今、海外だけでなく国内でもソーシャルビジネスの企業やサービスは増えてきているので、これからも新たなソーシャルビジネスが登場したらご紹介することで私たちもサポートしていきますね。
 
社会課題をビジネスで解決するソーシャルビジネス。この存在が、世界の多くの方を救うものとなることを願って。
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

               
ライター:Ayaka Sato
Ethical Choiceのインターン。自分のアクションで、地球のどこかの誰かが幸せになってくれる、そんな未来を描いて日々奮闘中。
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